807.質問する姿勢
2023.04.30
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
時折、質問してきたはずなのに、ご自身の考えを蕩蕩と述べ出す人がおられます。
だいたい、そういう方はご家族と上手くいかないなど、何らかの緊張関係をお持ちのように思います。
これを少し心理学的な言葉も用いて紐解いてみたいと思います。
二重拘束(ダブルバインド)という言葉があります。
「カレー?ハンバーグ?どっちにする?でもミンチこねるの面倒だな。」
と最後にぼそっと入ると、それは、結局ハンバーグを作るのは面倒くさいからこちらにカレーと言わせたいってことだよね?っていう感じになるんじゃないかと思います。
っていうことはそもそも2択ではなく、択一の答えなのであって、2択で聞く意味はほぼないということになります。
どちらもOKであるように装っているけれども、択一の答えしか選ばせないような関係の取り方を二重拘束と言います。
これを子育てなどでやってしまうと、子どもはどうせ言っても無駄、親の言う選択肢しか選べない、と諦めたり拗ねたりし、それが親子関係に影を落とします。
子ども相手でも、専門家相手でも、質問した以上は、相手の回答を聞き切ることが重要です。逆に、きちんと聞く覚悟がないならば、軽々に質問するのは良い姿勢とは言えないのではないでしょうか。
何気なくしている会話でも、親だったり年上だったり、自分のポジションによって相手を二重拘束で押さえ込むことは差し控えたいものです。普段から質問と答えには、ご自身の姿勢作りも問われていると捉えておくことが必要ではないかと思っています。
806.自由連想とアネクドート
2023.04.29
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
日本で有名な精神科医が、フロイトの遺産として最後まで残るのは自由連想であろうと予言したと言います。
精神分析の多くの概念が時代遅れになっても、確かに自由連想だけは人間の自由な発想として残っています。
前稿でAIについて触れましたが、患者さんの相談事に対して、自分の体験や伝聞などについて返すことはアネクドートなどと申しまして、ミルトン・エリクソン以来の重要な治療技法となっています。
AIは人生経験自体がないのでアネクドートを述べることは出来ません。
その場で当意即妙に思いつく、聞き手の体験談などは、押しつけになってはいけないのですが、二人で行う自由連想としてのアネクドートは臨床の場を豊かにし、相談者の発想の硬さをブレイクしていきます。
AI時代に残るのは、医師の温かみと覚悟、そして、技法的には自由連想とアネクドートではないかと、ふと思いました。
805.ELIZAエフェクト
2023.04.28
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
先日の報道で、AIのChatと話しているウチに、ELIZAから天国で私と一緒になりましょう、と誘導されて男性が自殺したなんて話がありました。
囲碁将棋が既にトッププロよりもAIが強いことは知られていますし、ChatGPTで読書感想文を書いてくる小学生もいるそうです。カウンセリングに於いてもロジャーズのクライエント中心派を学習させたAIはプロの心理学者も驚くほどの対応をするようです。
人間のセラピストに掛かっていても死んでしまうことはあるでしょうから、AIが全て悪いとは言いませんが、人間のカウンセラーや医師なら、一緒に天国に行こうなんて絶対に言いません。バージョンアップすれば変わるのかもしれませんが、今の時点ではAIにはプロフェッショナリズムが欠けていると言えましょう。
既に医学の世界でも、AIにディープラーニングさせると病理医と90%以上同じ結果が出るようですから、質の悪い病理医よりはAIの方が良いでしょう。病理学や放射線医学の読影などのかなりの部分が将来的に優秀なAIに取って代わられる可能性があります。
他方、当院で、一度は自殺をしようとした方が治癒されて卒業していく際に、死なないように諭してくれた医師の温かみを忘れないと言って頂いたこともあります。いのちの大切さに真剣に向き合う熱量のようなものは、AIにはないものです。
AI時代に、人間同士がなせることを改めて考え直す必要があります。
それでも、私は人間がサービスに関わることは重要なのではないかと思っています。
804.心根を太くする
2023.04.27
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
過去に被害を被った相手を許すというのは、度量が必要なものです。心的外傷が残っている状態では、なかなか加害者を許すことは難しいと思います。
どんな理不尽な目に遭っても最終的には許すことになると思うのですが、準備が出来ていないウチから結論を言ってしまっても、むしろ無理と思われたり、反発を生んでしまいますから、相手を許すテーマというのは最終段階だと考えています。
そこまでして、加害者を許さないといけないのかということになるわけですが、相手に対して、陰性感情が強いと、許すのはなかなか困難です。どうしても処罰感情が出てしまいます。
そういう場合は、一旦、相手との関係性は棚に上げておいて、まずは自分の心根を太くするのが良いのではないかと思っています。自分で自分を認める、自分で自分にOKを出す。これも広い意味で自己管理の一つだと考えています。
自分が充実していけば、それらの過去のことは、済んだこととして処理出来るようになり、処罰感情はいつの間にか洗い流されていくかもしれません。
美味しいものを食べて、よく寝て、自分を認めてくれている相手と交流しながら、自分の心根が太い大木のようになれば、相手がどうこうと言うことはだんだん関係なくなってきますから、少し時間が掛かってもご自身の心根を太く出来るよう、心に栄養を与え、心を養育してみてはいかがでしょうか。
803.陰徳
2023.04.26
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
正法眼蔵随聞記に人は必ず陰徳を修すべしとあります。
陰徳とは、どういうことでしょうか。
何か人のために行うと、私共の心の中には、やってあげたからこうしてほしい、とか、やってあげたのに見返りをくれない、なんていう反応が出て来ることはないでしょうか。私はまだまだ未熟者なのでともするとこう言った考えに陥ってしまいます。承認欲求のような願望のような気持ちがあるのだと思います。
陰徳とは、褒めてもらうとか認めてもらうことを目的としていない善行を意味しています。報酬も見返りも求めない行いです。
見返りも報酬も求めないというのは難しいことですが、常日頃から意識しておく必要があるのかもしれません。
802.人は機械を使い、人は機械に使われない
2023.04.25
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
人は機械を使い、人は機械に使われない。
これは私の信念でもあり当院の理念でもあります。
人間が機械のフォーマット等の都合や故障の都合で振り回されることはありがちなのですが、出来る限りどんな高級な機械であっても、人間がそれを道具として使う立場なのであって、人間が機械に振り回されてはならないと考えています。
スタッフから、方針を聞かれた時に、この理念を当て嵌めるように考えていて、看護師や心理士が機械に使われてしまわないように心がけています。もちろん医師もです。
人間が機械の都合で使われている組織は良い組織とは言えません。システムを変えるか、何らかの改革を必要とします。人が機械を使いこなす理念で改革中ならまだ良いのですが、一向に改まらないのであれば、その職場と別れを告げるのも一つの考えです。そして、機械を使いこなすためには、アイディアやシステムの改良について人間側が常に創意工夫を考え続ける必要があります。
そして、なんで勉強しないといけないのかという答えの一つに、どんどん高度になる機械を人間なりのアイディアで使っていくためには知識や経験をストックしていく必要があるから、ということになるでしょう。
仕事がしんどいと感じる時に、それが人間関係や仕事の絶対量でないならば、機械に使われていないか、改めて振り返ってみられるのも、役に立つかもしれません。
801.尚友
2023.04.24
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
哲学者、教育者であった森信三先生は、読書、尚友を大事にされていたと言います。
尚友とは、友を尚ぶ(たっとぶ)ということです。友と親しむ、ではない所が鍵なのだそうです。
友が、道に於いて自分より先を行っていることを尊敬し、大切に思うのを友を尚ぶ、というようです。
友とは、対等な立場でありながら敬意を持てる存在であり、妬んだりそねんだりする対象ではなく、馴れ合ったり、傷をなめ合ったり、依存する対象ではありません。たっとぶべき人物が友達になっていない場合は、それが自分の生き様の鏡ですから、ご自身を見つめ直すことも必要かもしれません。そして、たっとぶべき人物に認めてもらえるよう、日々精進が必要なのでしょう。
800.八百
2023.04.23
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
たまたまですが昨日のブログが千、で、今日が八百。
千はIDで八百はブログのタイトル数です。
1日1投稿でやってきましたが、良くも800日間投稿し続けたものだなぁと、我ながら道を振り返っております。
ブログのネタっていうのは流石に尽きてくるものなので、インプットもしなければなりません。
大山名人をはじめ優れた人の言葉などを自分なりに咀嚼したり、臨床雑感と絡めながら書いてきています。
継続は力なりと申しますが、続けることも一つの力なのではないかなと思っています。
大したものでなくても800も続けば一つの作品のようなものになるわけで、大きなことが出来ない自分でも、小さなことをコツコツと積み上げていけたらと思っています。
799.千
2023.04.22
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
R3年6月に開院して以来2年弱頑張って参りました。お越し頂いた患者さんのIDが千を迎えることになりました。
1年に500名以上の方のIDを作成したことになります。1割程度、予約のみで未受診に終わった方もあり、実診療数は900名程度かもしれませんが、それにしても、それだけの方を診療出来たのは、ひとえに皆様のご理解とご支援の賜物です。
勤務医時代は年間の新患数が100~150程度だったと記憶していますから、5倍くらいになっています。
もちろん、病院と異なり、病棟の入院患者さんの診療はしなくても良いので外来のみですので、当然増えるわけですが。
このように年間の新患数500名以上で来られたのは、電話予約制、新患枠の設置という他院ではあまり見られない独自のシステムを採用していることもあります。
インターネット予約は便利なようでも、めいめいが自由に枠を取ってしまうと、朝一から複雑なご相談に時間が掛かったりすると結局予約の時間があってないようになるか、込み入った話も鬼のように5分で切ってしまうかのどちらかしかやりようがなくなります。当院は人対人を大事にしていますので、受付の看護師などが込み入ったご相談の場合は余裕のあるお時間をご案内するなど工夫しています。
今後も、一人でも多くの皆様の支えとなれるよう、職員一同精進して参る所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
798.お金の信用
2023.04.21
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
金の切れ目が縁の切れ目、なんて申しますが、他人であっても家族であっても同じようです。
特に夫婦は、他人が縁あって結ばれている組合せですので、生活費を入れないとか、共用のお金を勝手に使ってしまうようなことをすると、配偶者からの信用を著しく損ないます。当院でも、この手の相談は結構ありまして、個別の詳細は守秘の関係で申し上げられないものの、上記のような、お金の不足や使い込みでトラブルになっている夫婦問題を良く耳に致します。
一事が万事ということで、お金のルーズさや厳密さの温度差は、なかなか埋まらないことが多いです。悪かったと思う方が十分反省してくれれば、婚姻を継続出来る可能性が残りますが、繰り返している所は、今後も同様のことが起こると予測しておいた方が良いでしょう。
それに関しては、離婚までするのかどうかは、配偶者間に子供がいるかどうかとか、子供の年齢や理解、自立度がどの程度かなどによって、辛抱して婚姻の形を残す努力をされる方もおられれば、精算して離別される方もおられます。
関係修復もしくは離婚については、誰かから言われたからではなく自分の責任で決定する必要があります。
出来るだけ、婚姻が決定する前に、交際期間に金銭感覚や価値観については、相違がないか確認をして、話し合ったり歩み寄ったり出来ることはそうしておくことと、出来る限りお金には誠実な態度で配偶者と向かい合うことが必要ではないかと思っています。