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868.記憶の蓋

2023.06.30

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 解離性障害などで、どうしても一部の記憶が取り戻せないという場合があるようです。
 自分の姓を旧姓で認識していたりとか、職業も事故以前のものと認知していたりとか。

 催眠の天才ミルトン・エリクソンは、贈り物が何だったのか忘れてしまった女性に対して、催眠で自動書字などを用いてあの手この手で記憶の再想起を手伝ったことを論文にしているようですが、大阪城攻略のように外堀を埋めたり、一見関係なさそうな所の断片を集めていくことは出来たようです。

 とても嫌な思いや辛い思いがあり、記憶の蓋を開けたくない人には無理に開けようとせずに、現在の治療資源で適応的な行動を取れるような援助をしています。
 そうすると、日常が徐々に機能するようになり、その結果として、思い出しても差し支えないことに関しては天岩戸ではありませんが、少しずつ蓋が開いていくようです。一応催眠療法なんて手段もあるにはあるのですが、当院では、心理的な記憶障害の場合は無理なことはせずに、生活を機能的にすることから援助させて頂いています。

867.R.I.D.

2023.06.29

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 当院は、若干のお子さんとお年寄り以外は、大半が働き盛りのビジネスパーソンがいらっしゃいます。男女比は1:1.6くらいなので女性が多いです。

 20~40代の女性となりますと、妊娠希望や授乳中などの理由により、なかなかお薬を投与しにくい方もおられます。

 それならそれなりに、ニーズに即して対応するだけなのですが、一つの指標としてR.D.I.というものがあります。

 R.I.D.とは、相対的乳児投与量( Relative infant dose RID )というものです。新生児が、)という、新生児が1日に母乳を介して摂取する薬の用量と、その薬の母親の摂取量を比較した指標です。R.I.D.が10%以下ならほぼ安全といわれています。

R.I.D.=母乳を介した新生児の摂取量[mg/kg/day](=新生児の摂取量=母乳中濃度×哺乳量)/母親の摂取量[mg/kg/day]

で、計算されます。

 気分安定薬であるリチウムなどはRID=12~30%と高いため内服中の授乳は推奨されていません。抗てんかん薬などは、RIDの低いものを選べば授乳は可能となっています。

 当院ではこれらの指標も考慮しながら処方を考えさせて頂いております。
 御心配な方はご相談頂ければと思います。

866.身調べ

2023.06.28

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 心療内科で用いられるセラピーの一つに内観療法というものがあります。
 恩師の久保千春先生(第3代九大心療内科教授、元九大総長、現:中村学園大学学長)は内観医学会をリードされていました。
 浄土真宗の行である身調べという方法を、吉本伊信が敷衍して始めたものと言われています。

 内観療法では、自分自身が身近な人に、

・して頂いたこと
・お返しして差し上げたこと
・迷惑を掛けたこと

 などについて毎日具体的に想起させて自己洞察を深めさせるものです。

 内観療法を受ける合宿を提供している寺院もあるそうです。
 心療内科医の後輩が実際に行ってみてとても良かったことを教えてくれました。なかなか1週間自分の時間を投入するのは独身でもないと難しいですが・・・。

 当院では内観療法そのものはそれだけの労力も掛けられないので出来ないのですがその視点は大切にしており、内観をお勧めして寺院などでやってきてもらって良くなった方もおられました。

 普段からも、自分の身調べはやっておく価値があるのではないかと思っています。

865.La necessità aguzza l’ingegno.

2023.06.27

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 窮すれば通ず、とも言いますが、直訳すると必要は才能を鋭敏にする、となります。

 ピンチの時などに思わぬ思いつきのおかげで窮地を脱することが出来るというような意味で使われるようです。

 必ずしも、ピンチの時に良いアイディアが出て来るかは分からない時もありますが、もし思いついたらそれは幸運なことですね。でも、一人で思いつかない時などは、ご相談頂ければ、一緒に考えさせた頂ければと思います。

864.ピザとピッツァ

2023.06.26

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 イタリア語をやっていますと、Pizzaという単語はしょっちゅう目にする訳ですが、色々日本のピザとは違うようです。

 そもそも、ピッツァはナポリが発祥で、貧しい人がどうにか美味しくものを食べる様に作り出したのが始まりで、そういう意味ではもつ鍋とか豚骨ラーメンとか、捨てられそうな食材を工夫して食べるという博多の精神に通じるものがあるのかもしれません。

 それに、驚いたことに、イタリア人にとって、ピッツァは一人1枚。シェアは厳禁だそうで、同じの欲しかったら自分で頼みなよ、とイタリア人は交換してくれないそうです。NHKの語学講座でも言っていました。

 他方、日本のピザは、照り焼きチキンとか明太何とかになっていて、そうなってくると、マルゲリータのようなものとは全く違うものになっているような気がします。

 調べてみると、日本のピザは、米国経由のようで、米国のイタリア系アメリカ人が始めたピザのようです。シカゴなどで宅配されるようになり、東京に持ち込まれて広まったようで、その後は日本の工夫が重ねられているために、原典的なピッツァと日本のピザは違ってしまったようです。

 日本人が魔改造した料理は一杯あるようですが、ピザもその一つだったとは知りませんでした。まあ、日本のピザも美味しいので、日本風に家族や友人とシェアしながら頂こうかなと思っています。

863.SDLP

2023.06.25

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 自動車を運転する場合は、飲酒運転はもってのほかですが、変性意識や体調不良を伴わないことが大切になります。抗アレルギー剤、降圧薬などにも添付文書上運転不可のものがありますが、抗うつ薬や向精神薬のほとんどが日本の基準を厳密に適用すると運転不可となります。しかし、法律の条文には、どういう病気のどのような状態が厳罰の対象とすると言う風には明文化されておらず、現場の判断に丸投げされているのが実情ですし、医師に注意されても自己責任の範囲で、既にハンドルを握っている人も実際問題結構おられます。

 学会でもその辺は熱心に取り組んでいるようです。

 運転の指標にはSDLP(横揺れの標準偏差)、やBRT(急ブレーキ反応時間)など様々な指標があるのですが、薬物の影響を受けていると判断される指標がSDLPのようです。

 この辺は名古屋大学や産業医大などが積極的に研究を進めています。その一部の結果はこちら
 私も学会のガイドラインを精読しながら、自己の内容、生活の質の低下がないよう、患者さんとご相談しながら、現実的な妥協点を模索している所です。

 今回の学会でも大変勉強になったので、また、実臨床に反映出来るよう務めて参ります。

862.ワンクリック心性

2023.06.24

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 歳を取ると、昭和の人も平成の人も、今時の若い者は等と言い出します。

 みんなその時その時に今時の若い者をやってきたはずなのですが。

 今時の若い人達の心性として、ワンクリック心性というのがあるそうです。最近は便利な世の中になり、Amazonでも、今すぐ買うボタンをポチッとやるとどのクレジットを使うかとかどこに届けるかとかの確認もしないまま、いきなり買えることもあります。便利になった反面、欲求即実現しないと不満になることもあるようです。
 これをワンクリック心性というようですが、具体的にはフラストレーション状態に弱い、つまりは堪え性がないということになるのでしょう。

 先日は王座戦で、新しい戦法を披露した村田六段が藤井七冠を95%まで追い詰めて、後少しで勝ちだったのですが、将棋というのは恐ろしいもので、ほぼ勝ちを勝ちにすることが至難の頭脳スポーツです。5九金やら、6四銀やらAIも悩み込む鬼手を連発している内に、村田六段の勝利はするりと逃げてしまいました。
 絶対敗勢の中でも、泣き言を言わず、顔にも出さず、虎視眈々と勝利を狙う藤井竜王名人は、最近では上司にしたいアスリートの2位(一位は大谷翔平選手、3位が羽生結弦選手)でした。彼らの魅力はワンクリック心性とは真逆の、アナログな努力の中に辛抱し、耐え忍び、努力を続ける所にあるのかもしれません。

 ワンクリック心性でカリカリしているという時は、自然の中を散歩したり、ゆっくりお茶を飲んだりして、ご自身のテンポをゆっくり変えてみるのも良いかもしれません。

861.精神神経科学会に行ってきました

2023.06.23

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 パシフィコ横浜ノースで開催された、日本精神神経学会第119回大会に参加してきました。金曜日診療する関係で、木曜日しか参加出来ませんでしたが。
 自分で発表した以外に、精神病と運転免許や先達の話、会長公演と聞いて参りました。オンデマンドでも勉強出来るので、今後もぼちぼち拝見したいと思っています。

 やっぱりリアルタイムで会うと、おしゃべりしたり旧交を温めたりするものも良いものです。
 またしっかり勉強を積み重ねて、皆様のお役に立てますよう努力して参ります。

860.夫婦における10の覚悟

2023.06.22

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 近所の東野産婦人科の東野純彦先生は、3万件以上のお産に立ち会ったご経験もある上、福岡市では指折りの名医と言われています。そのご経験から幸せになるための覚悟について本を出されています。

 今日はそこから、夫婦(家庭)における10の覚悟を参照させて頂きましょう。

1.家庭を守る覚悟
2.怒らない覚悟
3.比べない覚悟
4.違いを認める覚悟
5.人を頼る覚悟
6.諦める覚悟
7.素直になる覚悟
8.何があってもパートナーの味方でいる覚悟
9.子供の問題が起きたら二人で乗り越える覚悟
10.許す覚悟

 詳細に興味がある方は、幻冬舎の「幸せになる覚悟」をご一読頂ければと思います。

 どこか弱いかな、と思い当たられる方は、当院の医師や臨床心理士にご相談頂ければと思います。

859.若者笑うな来た道だもの

2023.06.21

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 妙好人の言葉として伝わるこれは、年寄り笑うなの稿でも触れました。

「道」というタイトルだそうです。

 世の中のことがまだ見えていない若い時期は、やってもらうことが当たり前に感じたり、してもらえないことに不満を感じたりしがちです。しかし、その不満な結果というものが、およそ世の中の平均としてそういうものだと知った時や、それぞれが頑張っていてもそのような結果になってしまっているということを知った時、色んなことがありがたく感じたり、不満をぶつけたことが申し訳なく感じることがあります。

 そのような贖罪や感謝の気持ちを相手に伝えたり、配慮が出来るようになるのを成長と考えることが出来るのではないかと思います。

 若い患者さんがちょっとずつ、そういうことが出来るようになった時に、一つ大人になったのだなと成長すると同時に、若者笑うな来た道だもの、と思っています。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分