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141.病、市に出せ

2021.06.28

141.病、市に出せ

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 1日より六本松地区で開業しましたまつばら心療内科の松原慎と申します。
 素敵なスタッフに囲まれて、日々、元気に営業しております。

 ブリーフサイコセラピー学会のオンライン大会に参加しています。
 岡檀(まゆみ)先生の基調講演、「未来を生き抜く力、見つけたい:日本で”最も”自殺の少ない町の調査から」を拝聴しました。

 録画や録音は許されていないので、記憶に抜けがあるかもしれませんが大変興味深い調査でした。

 自殺の少ない町、徳島県海部町と、似たような規模だけど自殺の多いA町を比較した調査研究です。

 すると、海部町には日本では割と珍しい風土があることが分かってきました。

・同調圧力を嫌う
・色んな人がいた方が良いという価値観(居ても良い、ではなく居た方が良い)。
・関心は持つけどジャッジはしない
・路地があって適度なコミュニティがある
・病、市に出せ(不具合は早めにオープンにした方が損害が少ない)
・一度はこらえたる(失敗を許す文化)

 かつて材木業などが盛んになって色んな地域から人が入ってきたことがある風土ゆえ、多彩な人材を認める文化がある(この辺は博多港のある福岡も割とよそ者に優しいのですが、地域で住むとなると、同調圧力の嵐がすごい(体育で立つ時や『やー』と言って立たなければならない等)ので、常駐して住む場合も多様性を徹底的に認めているのがデフォルトな所が福岡市よりも遥かにに先を行っています)。

 自殺の多い方の町は、恥は孫の代までとレッテル貼りがきつく、失敗を許さないため、引っ越して出ていく余力のある人は良いのですが、それがなければ確かに死にたくなるのかもと思います。

 海部町では新人町議さんが、「選ばれたからには平等だからどんどん意見を言うように」と先輩から言われるそうで、一年生のくせに生意気なとか、控えろ、と言うことはないそうです。岡先生はそれに着目して他の自治体でもこの質問を繰り返したそうですが、彼女の質問した範囲において海部町と同じ風土だった議会はなかったそうです。

 自殺対策のポスターを貼るより、路地のある構造、関心は持つけど監視しない距離感の良いコミュニティ、失敗や多様性に寛容な文化を醸成出来れば、自殺対策なんて要らないかも、という話でした。セラピーをしていると自殺などは阻止する必要がありますがそもそも、自殺したいと思わせないのが一次予防なんだろうなとも思いました。なかなか興味深い研究でした。

 私も普段の臨床で、情報は提供するけどジャッジは下さない等気をつけてはいるつもりです。

 勉強してきたことをまた、地域に還元出来るよう頑張りたいと思います。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分