ブログ

1280.公平感

2024.08.11

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 人間が類人猿と違うのは、道具、火、言葉などが使えるということがあるようです。
 ただ、生き物は不思議なもので、その辺はある程度ボーダーレスな所もあるようで、イルカにも言葉は分かるらしいし何らかの会話をしているそうですし、カラスの鳴き声にも意味があるそうです。

 集団における平等主義、公平感というのは、どのくらいの動物が持っているかと言えば、マーモセットには平等主義がないそうですし、チンパンジーも平等にしようとすると嫌がるんだそうですし、マーモセットに至っては自分から不平等にしようとするそうです。

 ゴリラのボスは、餌を持っていると周りの雌から配分しろとうるさく言われるとも言います。

 フェール教授らの研究によれば、人間の子どもは3~4歳までは利己的でアリ、5~6歳になると共有ゲームで平等を選ぶ子が22%に増えるがまだ少数派、7~8歳になると45%が平等主義を選ぶそうです。
 ただ、年齢が全てではなく、兄弟姉妹の有無などもそれらに関与する因子と言えるようです。

 いずれにしても、人類が他の動物と異なるのに、集団における公平感も、他の動物と異なる点と言えます。利己主義か平等主義かと言う価値観は教育や家庭環境によって形成されることが判ります。

 大竹は、就学前教育の重要性を再度強調していますが、それも重要としても、我々大人はある程度育ってしまっていますから、そういう我々自身も、年齢に応じて、公平感を持つなり社会性をしっかり高めていく必要があるのかもしれません。

1279.ペリー就学前計画

2024.08.10

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 2000年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授は、2006年の米国科学アカデミー紀要にスタンフォード大学のクヌーゼン教授らと共同論文を発表しました。その要点を一言でまとめると、「経済学的にも神経生物学的にも、将来の労働力を強化し、生活の質を高めるタメの最も効率的な戦略は、幼少期の恵まれない子供達の境遇を改善すること」と言います。
 彼らはペリー就学前計画という就学前の子供達に行った教育支援の実験的政策の効果を明らかにしています。
 3~4歳のアフリカ系アメリカ人の恵まれ内子供達に、午前中の学校教育と午後からの先生の家庭訪問を含む2年間の介入実験をしたそうです。

 被験者の子供達は、40歳になって時点で、同じ鳩翁宮にあったが実験二酸化していない子供達と比較して、高校卒業率、所得、持ち家率が高く、婚外子を持つ比率や生活保護受給率、逮捕される率が低かったといます。

 こうさつとしては、介入を受けた子供達が高い学習意欲を持ったことが原因だと言います。

 ペリー就学前計画の投資収益率は15~17%と非常に高いものになるといいます。
 生後4ヶ月から行った別の介入実験では子供達のIQも高まったとされます。

 さらには、学校教育の段階で恵まれない子どもたちへ援助をしたところで就学以前の段階で家庭環境が悪いとあまり効果がないことも明らかになっています。アメリカでは親の所得階級による子どもの数学の学力差は6歳時点で既に存在して、拡大し続けるそうです。

 先日は東京都知事選があり色んな公約が飛び交っていましたが、学校の改善を主張した候補者もいたようです。

 しかし、ペリー就学前計画を知っていくと、保育園や幼稚園の教育の重要性があるようにも思います。子育てはしんどい面もありますが、面倒だからといってスマホ任せにせず、子どもの知的好奇心を刺激するような教育が大切なのではないでしょうか。

1278.アリとキリギリス

2024.08.09

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 待つ選択肢をした後に、利率が悪いとそんなに待てない、と後悔してしまう原因は双曲割引という特性ということが分かります。
 マルクアーらは、fMRIやPETを用いて、ニューロエコノミクス的研究を進めています。彼らによれば、近い将来に関する意思決定を行う際に活動する脳の領域と、将来のどの時点野石決定についても活動する脳の領域が異なることを明らかにしたそうです。

 人間の脳にはアリとキリギリスの療法の思考システムがあると言うことです。

 合理的だったり非合理的だったり、先を見越していたり、短絡的になったりするのはこういうことなのでしょう。

 心身を健康に保ち、こういう異なるシステムの稼働による行動のブレを防ぐためにも規則正しい生活をして良く寝ることが大事なのではないかなと改めて思いました。

1277.双曲割引

2024.08.08

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 双曲割引という言葉があるようです。
 これは、遠い将来の時間当たり割引率が、近い将来の時間当たりの割引率より低下するような特性をもつ時間割引率のことを言うようです。
 これが前回お話しした、夏休みの宿題を後回しにしてしまうことに関係します。

 それでは大阪大学社会経済研究所で池田らが行った研究を紹介しましょう。

 約60名の被験者に対して、以下の質問をしました。

Q1:どちらを選びますか
 A:2日後に3万5000円を受け取る。 
 B:9日後に3万5200円を受け取る。

Q2:どちらを選びますか
 A:3ヶ月後に3万5000円を受け取る。 
 B:3ヶ月後に3万5200円を受け取る。

 質問1の割引率は45%だが、質問2の割引率は16%であり、Q1の直近の1週間待つことの割引率の方が遙かに高いです。
 平均的には近い将来の時間割引が遠い将来の時間割引率より高くなります。

 3ヶ月待って200円増しという選択をした時、実際に3ヶ月経過した時に200円増しでは割に合わないと公開することがあり得る訳です。

 人間の時間割引の特徴は非整合的であり、堅実な人だとカードを持ち歩かないようにしたり、限度額制限を厳しめにするなどの工夫をしているかもしれません。

 そうはいってもなかなか自分の行動って制御できないものですから、私もブログを遅延させないように自分をだましだましやらないと・・・。

出典:池田・大竹・筒井2005
 大竹文雄著:競争と公平感
 

1276.夏休みの宿題

2024.08.07

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 夏休みの宿題はすぐに終わらせる派でしょうか、最後まで粘る派でしょうか。

 そろそろ、心配になる時期かもしれません。
 私は小学校低学年の内はさっさとしていたのですが、割と31日まで持ち越すタイプだったような気がします。

 実はこの夏休みの宿題をさっさとするかどうかということは、時間割引率と関係があると言われています。

 債務と夏休みの宿題についてアンケート調査をした人がいるらしく、借金の際の行動とも関連するそうです。
 消費者金融で借り入れを行い、債務整理になった人は、借り入れたが債務整理になっていない、セーフな人よりも、夏休みの宿題を最後にしていた人の割合が高いんだそうです 1)。さらに、消費者金融で借り入れをした人は消費者金融で借り入れをしなかった人よりも夏休みの宿題を最後にしていた人が多いと言います。
 さらに、夏休みの宿題を最後にしていた人は、そうでない人よりも肥満になっている傾向があるそうです2)。

 さて、そろそろ気になってもしこのブログを読まれたのでしたら、夏休みの宿題をするのは「今でしょ」ってことになるのかもしれません。

1)筒井・晝間・大竹・池田2007
2)Ileda,lang an Ohtake 2010

1275.ブルドーザー

2024.08.06

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 小樽市には最初、セラピーの講演で呼ばれたご縁で、何度か演奏させて頂く機会もあり、それなりのゆかりある土地です。
 そこで知り合った方々の内、最も大切にしている内の1人が森万喜子先生です。
 せんだってまで7年間校長先生をしておられた教師の方です。とても捌けた性格の方で、生徒からツーブロックがなんで禁止なのかと聞かれて、それは校則だからだけれども、校則の変え方を教えるから民主的方法で改訂してみてはという提案をして、子供達は、精度を変えることに挑戦が出来た、という体験をされたエピソードがあります。ウサギのポストを目安箱にして、必ず目を通す、スーパー校長先生であり、ついたあだ名がブルドーザー万喜子だとか。
 今でも全国に引っ張りだこで、新聞などにも寄稿されており、尊敬する先生の一人です。

 今回は沖縄から山口に移動する途中にわざわざ福岡に立ち寄って下さいまして、久方ぶりの再会を喜び合いました。

 唯一心配だったおタバコも、体調管理を理由に最近はお止めになったそうです。優れた人物にはいつまでも活躍して頂きたいものです。
 このご縁を喜び、また森先生を今後も応援したいと思っています。

1274.もっと貪欲に

2024.08.05

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 先日ある親しい友人から、もっと貪欲になれば良いのに、と叱咤激励を受けました。
 物欲にせよ、知識欲にせよ、向上心にせよ、ある程度あるとは思っていたのですが、友人が見ている側面は、もっと出来るであろうにちょっと残念、といった所でしょうか。

 都度都度、真剣に取り組んでいたとしても、オカリナの練習などで良く気づくのですが、指摘される点は隙がある箇所ばかりです。
 精度を上げていくためには、この隙を埋めて充実した音を出していく必要があります。

 特に音の始まりは良くても終わり方が尻切れトンボ、までは行かないまでも、トッププロと比べるとやや隙間がある訳です。

 初心者の頃とは比べものにならないほど精度を上げてきたわけですが、結局は同じような指摘と改善の繰り返しで日々の精進があります。

 音が出せない夜でもレッスンの動画を見直すとか、見直しながら、楽譜にチェックを入れていくとか、チェックを入れた上でシャドウイングを行うとか、模範演奏を見直す、聞き直すなどやるべきことはあります。もっともっと、自分の向上には貪欲でありたいと、改めて思いました。

1273.卵を一つの篭に盛ってはいけない

2024.08.04

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 資産運用で用いられる警鐘を表す言葉として、「卵を一つの篭に盛ってはいけない」という物があります。
 これは資産を一つの株で運用した場合、資産全体が大きな危険性にさらされてしまうため、出来る限り資産は分散して持つべきだと言うことを表す言葉です。これは経済学の原則となっています。
 にもかかわらず、日本人は国内で資産を運用することが多く、外国の資産で運用している人は少ないと言われます。これはホームバイアスとも言うようです。

 これを読んで私自身が運用を国内でやっているのでドキリとしました。

 なんだかんだいって日本の方が信頼性があるとか、外国の物だと損した時に逃げられたら怖いとか、やはり馴染みがないが故に、心の中で自分の中の親近感などを合理化して理屈づけしてしまっているのかもしれません。

 自分が何かチャレンジして行きたい時に、ホームバイアス等に掛かり、結局は卵を一つの篭に盛って運んでいる、のと同じことになっていないか、時には立ち止まってチェックすることも必要かもしれません。

1272.親近感バイアス

2024.08.03

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 行動経済学には親近感バイアスという概念があるようです。
 シンガポール国立大学の周らは北京の大学生に対して、以下の2つの質問をしました。

①過去のある日の北京の最高気温が偶数か奇数か当てられれば1000円もらえる。
②同じ日の東京の最高気温が偶数か奇数か当てられれば1200円もらえる。

 日本人なら②を選びそうな物だと思いながら読んでいましたら、北京の大学生ということで、39.6%が①選んだようです。

 これの表すことは人間は多少経済的に損をしても親近感のある物を選ぶ傾向がある、といいます。
 このような性質を持つ人達は脳内の伝達物質であるセロトニン受容体に関わる遺伝子の特定のパターンが関与していると、周らは主張しています。

 大竹はこの例を引いて、ご当地グルメには、どこにでもありそうだがちょっとだけ違う物が見られやすいのは、この親近感バイアスによるのだと述べています。

 確かに九州のご当地グルメとか言うと、門司港焼きカレーなんてありますけど、カレーライス?ドリア?のような物に外からバーナーで焼け焦げを作り香ばしくして提供するような物で、本質的にはカレーですから、みんなが親近感を覚えますい、カレーに間違いなしということで安心して手を出せる代物です。宇都宮餃子なども、どこがご当地なのか今ひとつよく分かりませんが一大消費地というだけで、要するに餃子でしょ、という風な妙な安心感はあります。つけダレがちょっと変わっていたとしてもご愛敬であり、ロシアンルーレットのように激辛餃子などが混じっていたらちょっと引きますから、ご当地グルメはやっぱり親しみを持ってもらえる物が良さそうです。焼き鳥などに至っては、ご当地と言いうるかどうかがだんだん怪しくなってきている気すらします。

 親近感バイアス、というのが関与していたとしても、親近感を持ち、食欲をそそられればやっぱりちょっと食べてみたいと思う物です。暑い夏、皆さんはどんな物を召し上がって夏を乗り切って行かれますか。

1271.現状維持バイアス

2024.08.02

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 人間はある物を保持している時、それを保有していることの価値が高くなり、それを失うリスクを高く見積もりがちであり、このことを、現状維持バイアスと言うようです。

 例えば、ある資格であったり、専門学校卒であったり、その人があるスキルを獲得するのに、学費や年月といったそれなりのコストを掛けていることがあります。そのため、現状維持バイアスが働くと、折角その資格を持っているのだからその業種に就かなければ損だとか、その経歴を活かせる選択をしたい、等と言うことがあるかもしれません。
 ところが、その資格などが本人にとってはそれほど合っていないとか喜びを感じていない、むしろ重圧を感じたり、デメリットを感じていたりする、ということであれば、思い切って現状維持バイアスを棄却して、新しいチャレンジをする方が望ましいことがあります。

 負けているギャンブルから撤退しにくいのも掛けているコストを回収しないと戻れない、という心性から、思い切って損切りが出来ないことがあるかもしれません。

 ですので、自分が持っている資格や経歴が、業界的に十分に優位性があるのかないのか、それを活かそうとすることが自分にとって喜ばしいことなのかそうでないのか、今一度考え直すことと、より良い決断が出来るかもしれません。ご自分で判断なさりにくい時は一度ご相談頂ければと思います。

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