1270.利他性と遺伝
2024.08.01
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
利他の心や、危険回避度といったものは、社会を構成して生きる人間にとって、より生存を確実にするために必要な要素といわれています。
それでは、それらの要素は、移転的に決定されるのでしょうか?あるいは、後天的な教育によって得られるのでしょうか?
それらを調べるためにはいくつかの方法があります。
1つは、教育年数の変化が本人の選択の影響を受けないで発生するような状況を利用する方法です。ウガンダでは義務教育制度が年によって変化してきたことを利用して、バウアーとチィティロバは教育年数が長い人ほど時間割引率が低いことを明らかにしました。
もう一つは、双生児研究です。
一卵性双生児と二卵性双生児の間における選好ががどの程度似ているかと言うことから選好の遺伝割合を調べる方法です。
一卵性双生児は同じ遺伝子を持っているはずなので、選好が遺伝と強く関係するならば、2人の選好は同じになると予想されます。二卵性双生児は平均すると50%の遺伝子が同じになるため、相関は平均すると50%になるはずです。
サニエリは危険回避度や利他性の約20%が遺伝的要素で説明できることを明らかにした一方、家庭環境のような共通環境要因はあまり重要でないことを明らかにしています。
時間割引率については、双生児へのアンケートをもとにした大竹らの研究により遺伝的な貢献は25%程度であることが士支えれています。
つまり、75~80%は遺伝外の要素で時間割引率や危険回避度が決定されているわけで、選好の特性の決定には家庭環境や教育による影響が大きいということになるのでしょう。
先のために我慢をしたり、他者への思いやりを持ったりすることには7~8割方、家庭環境や教育の影響があるということから、親としては、思いやりの心を持つ子に育てるために、一層留意する必要がありそうです。