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40.切実なニーズを聞く

2021.03.21

40.切実なニーズを聞く

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 尊敬する心理臨床家に、田嶌誠一先生という方がいます。
 壺イメージという安全なイメージ療法の創始者であり、また、最近は、施設内の暴力が起こらないような仕組み、安全委員会に尽力されている優れた指導者として知られています。研修会の講師として教えて頂いたこともあります。
 田嶌誠一先生の業績は一杯ありすぎるので全部紹介は出来ないのですが、教えの中で一つ、肝に銘じていることがあります。それは、「クライエントの切実なニーズを聞く」ということです。
 看護師や心理士の取った予診が不明瞭な時、カンファレンスの議論が右往左往している時、それは、陳述者がクライエントの切実なニーズを聞いていないか、十分理解していない時、ということは往々にしてあります。
 先日も専門家対象の指導をしている時に、「それで、あなた自身の切実なニーズは何でしょう?」と切り込んでみました。そうすると、立ち所に余分なことは雲散霧消し、ご自分自身が大切にしている所を軸に考えることが出来ました。
 どうも方向性が見えない、どうして良いやら分からない、という時は、思い切って御本人に、その「切実なニーズ」を聞くことにしています。

39.基本に立ち返る

2021.03.20

39.基本に立ち返る

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 新しく立ち上げるクリニックでは、スタッフに対する教育も常に重要なことです。
 心理士さんや看護師さんに読んでもらおうと思う本を少し自分自身で確かめています。
 今日は、中井吉英著、「はじめての心療内科」を紐解いています。
 とてもわかりやすく、全人的に患者さんに向き合う姿勢を説いてある良著でした。もし興味をお持ちになった方があれば手に取って頂ければと思います。
 私にとっては修業時代からだいたい理解していたと思うことではあるのですが、それなりに簡潔明瞭に整理して頂いており、とても助かりました。いつかこのような文章が書けるようになりたいものです。
 中井先生の教えを胸に刻み直し、謙虚な気持ちで心身のケアに当たらせて頂こうと、決意を新たに致しました。

38.行動は変えられる

2021.03.19

38.行動は変えられる

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 性格を変えたい、というご相談を受けることがあります。
 性格を変える、というのは、なかなか難しい作業で、結論から言うと、ま、無理ですな、となります。
 しかし、やりようはあるのです。
 性格を変えることは難しいのですが、日々の行動を一つ一つ変えることなら出来ます。
 何か言われた時や何かやり取りした時の反応を変化させることが出来れば、相手方には、「性格が変わった」と認識されることが起こり得ます。そういう意味でも良ければ、「性格を変えることは出来る」(より正確を期すなら、相手方に自分の性格が変わったように思わせること)、は、出来ます。
 当院では、より肯定的な行動変容の援助が出来ます。
 周りに「性格が変わった」と思われたい方、時々不適切な行動を取ってしまう自分を変えたい方、一度当院でご相談頂ければと思います。

37.解離と向き合う

2021.03.18

37.解離と向き合う

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 心療内科医としてのキャリアをスタートさせた際には、解離性障害を診ることになることは想像していませんでした。
 福間病院でのキャリアの中で、600人以上の新患の方を診察して行く中で、100人に1人以上は解離の方がおられました。他の医師はそうでもなかったようなので、多分解離の方を見つけてしまう、ということなのでしょう。
 軽症の方はそれほど通わずに落ち着いた人もおられますし、重症の方は、首都圏から来られる方もおられます。多重人格の方も診てきました。
 私の場合、統合テクニックは使おうと思えば出来るのですが、どういうわけか、私の関わった患者さん達は統合されるのを嫌われる方が多く、それはそれなりにトーキングスルーでお話しさせて頂いていました。多重の拡人格の方それぞれを呼び出さずに話しているのが心地よいのか居着く方は結構定着されています。
 まだその辺の考えや技術については論文や著書に出来ていないのですが、自分なりの気づきを蓄積している所です。
 一般的な統合とはちょっと違うのかもしれませんが、なんか解離していても平気で診てくれる医者が福岡にもいるらしい、と思ってもらえればと思います。

36.民間催眠術とその救済

2021.03.17

36.民間催眠術とその救済

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 催眠術は割と簡単に修得できてしまう技術です。 それ故に、医師でも臨床心理士(公認心理師)でもない人が、マスメディアに露出してショー催眠を見せるのは、我々専門家にとっては頭痛の種です。
 ショー催眠の悪影響をいくつか挙げてみましょう。
1.催眠による対象者支配ばかりが強調される。
2.被験者の人権や気持ちに寄り添っていない
3.催眠療法すら支配的なものであるという誤解を広げる。
4.人が人を支配できるかのような文脈で語られるために、他者を支配したり操作したりするするためのツールという側面ばかり強調される。
5.催眠療法家が支配欲に満ちた傲慢な存在というイメージを視聴者に持たせがち。
6.支配するほどセラピーとは真逆になっていることが指摘されていない。
 など、一杯あります。
 民間催眠術師によって、間違った「診断」を下され、いたく傷ついた方を、医師として正しく診断し、癒やしも提供しました。御本人と病院倫理委員会の承諾を得て学会で発表もしています。非医師が診断を下すのは医師法違反ではないのだろうかと思うのですが・・・。残念ながらそういった輩は逮捕されずに著書まで出しているようです。
 じゃあ、医師や心理師がセラピーとして使う催眠は違うのか?という質問が当然出てくることでしょう。
 違います。
1.クライエントに支配的な治療を施して治るのは 「夜尿症(おねしょ)」「車酔い」だけです。専門家なら皆知っています。
2.催眠療法とはトランス状態を介して、御本人が何かに気づいたり、やっていけそうな感じを持てるよう援助するささやかな行為に過ぎません。支配するなんておこがましいことは、小さい子の夜尿症の治療以外では考えません。真の催眠療法家は、変性意識を通じて人間が起こせる、不思議な現象にどこまでも謙虚であるべきです。 ですので、院長が行う催眠は、トランス状態は体験して頂きつつ、体験者がどんなアイディアを持とうが自由、というスタンスです。
 せっかく自分の診療所を立ち上げるので、お客様には存分に変性意識と自分の気づきの素晴らしさを体験して頂けるようなプログラムを提供できないか、現在検討しています。

35.桜が咲きました

2021.03.16

35.桜が咲きました

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。

 いよいよ福岡でも桜が咲き出しましたね。
 ソメイヨシノではない山桜などは満開のものもあるようです。
 桜が咲くとなんだかわくわくしますね。

34.催眠療法 その1 催眠術修得~心療内科入局まで

2021.03.15

34.催眠療法 その1 催眠術修得~心療内科入局まで

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 三重県出身の私がなぜ九州に居着いてしまったかにも関係するのですが・・・。
 大学時代に催眠術の本を読んで、東京の民間の催眠の先生に習いに行きました。催眠を掛ける技術がとても秀逸な人でした(もちろん人としても尊敬しています)。夏休みを利用してユースホステルに連泊したりして、何とかそちらの講座を終えました。
 大学に戻ってきて、友達に掛けてみると、年齢退行させて赤ちゃんに戻すと足の裏ではバビンスキー反射が出たり、後催眠暗示という現象も実際に再現することが出来ました。
 これはかなりすごいものなのではないか、と直感しました。
 もちろん、他の方にそれだけの影響力を行使できることに多少満足感がないこともないのですが、人間心理というものは、暗示や教示によって時には生理的な変化すら起こしてしまうことを目の当たりにしました。バビンスキー反射というのは乳児にしか出ない原始的な反射で大人になると消えてしまいます。生理学の教授になぜこういうことが起こるのか質問してみましたが納得のいく回答は得られませんでした。
 変性意識(トランス状態)と人間の変化というのはかくも劇的なものかと思った私は、元々寺の子という心性も手伝って、この不思議な現象を医学的に役立てる前向きな方法はないだろうかと考えました。
 催眠、という名で当時学術書を追いかけていくと、池見酉次郎、成瀬悟策、という大学者が、2人いることに気づきます。その共通項は「九州大学」でした。池見先生は心療内科の初代教授。成瀬悟策は心理臨床学会を作り、公認心理師国家資格かの前段階である臨床心理士をプロフェッショナルな資格に押し上げた巨人です。動作療法の始祖としても知られています。
 先日、東京の催眠術の恩師から頂いたお手紙が出てきました。
「松原さんに必要なのは医学や心理学の知識です。技術は教えましたが、単なる催眠屋になって欲しくありません。しっかりと正統な道で勉強を積み重ねて下さい」と言った主旨の激励でした。
 そこで、「九州大学」というキーワードをたどり、第3代教授だった久保千春先生の門を叩きました。
 今でも忘れ得ぬ言葉があります。
「今催眠をやっている人は医局にはいないけど、何かミスでもしたら僕がしっかり守るから、心療内科に入局して一生懸命催眠をやってみなさい」といった主旨だったと思います。
 政治家も秘書がやりましたと逃げるこの時代、どこの馬の骨とも分からない医学生にここまで言える教授はとても大人物なのだろうと直感し、九大心療内科への入局を決意しました。
 その直感は当たり、久保先生はその後九大病院長、総長を歴任され、今は私立大学の学長となられて、いつまでも必要とされる大人物でした。ひよっこの頃の私のために、催眠療法研究会も代表をお引き受け下さり、すさまじいスケジュールの中でも研修開始のご挨拶に駆けつけて下さっていました。
 久保先生には一生足を向けて寝られません。
 そんな私も、日本の様々な催眠の大家に学んで力を付けていきました。
 学びのプロセスの思い出などは、また、追々書いていければと思います。

33.梅の葉

2021.03.14

33.梅の葉

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 福岡でも桜の開花宣言が出て、山桜などは満開の種も出てきました。
 まだ、寒椿がぽとぽと落ちたりもしています。
 ふと見ると、梅の枝からは葉っぱの新芽が出てきています。
 もみじの木も、赤くなってきました。秋に紅葉するまでは、緑の葉っぱのもみじなのですが、新芽が赤いのは発見でした。
 菜の花も道行く人を楽しませてくれています。
 春の息吹を所々に感じますね。

32.許すこと

2021.03.13

32.許すこと

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 ある係争を抱えている方を診察していました。
 お互いに多少非がある話だったのですが、相手方が私の前に現れることはありませんので、その方を支え続けることになります。
 もちろん、後遺障害や色んな物がその方を苦しめている訳なのですが、怒りの気持ちの処理というのは結局は許すことではないかと思っていました。
 暴力団の流れ弾で家族を失ったとしても、酔っ払い運転で家族が轢かれたとしても、どんなに怒りをあらわにしても失った物は帰ってくることはありません。
 許せない、と思い続けることは、実は感情の嵐を抱え続けることでもあります。
 中には怒りを昇華させて、伍子胥や范雎のように一生の恨みを見事な業績に変えてしまった人もいますが、稀です。
 他人を許せない、という人は、自分自身を許せないことも多いようです。
 そういう時は、一つ大きく成長して、自身を許すことが大事かもしれません。タイミングを見計らいながら、そのような提案もさせて頂いています。
 許せない、と思っていたことを、まず、許そう、という風に変えられた時、心は大きく成長しているように思います。そして、穏やかになります。
 許せない、なんて気持ちをお持ちの方、一度当院でご相談頂ければと思います。

31.余白

2021.03.12

31.余白

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。
 福岡市の六本松に2021年6月1日から心療内科のクリニックを開設させて頂きます、松原慎と申します。
 エヴァンゲリオンの最新映画が話題のようです。
 年齢的にこの手のアニメはガンダムが最終だと思っていたのですが(あ、まどマギは観たんでした)、ガンダム好きの友人からはやれゼータも見ておけとか、色々言われて来ました。
 エヴァンゲリオンという名前を聞いたのは確か大学時代でした。後輩からお勧めされたのです。
 何だかんだ言って、アニメも名作は好きなので、エヴァンゲリオンもうっかり前回までは拝見しています。
 ところで、今回の映画がどのような結末にせよエヴァンゲリオンは、ファンに考えさせる。議論を巻き起こさせる、そのような余白の使い方という意味においてとても素晴らしいようです。アニメになっても谷崎潤一郎の陰影礼賛に示されるような、描かれている所があるゆえに描かれていない所の陰影があるような、余白に何かを求めるのは日本の文化の深みなのではないかと愚考しております。
 さて、最新作はその期待通りなのでしょうか。期待以上なのでしょうか。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分