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815.デコヒーレンス

2023.05.08

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 デコヒーレンスとは量子力学で用いられる用語で、量子系の干渉性が環境との相互作用によって失われることということです。
 量子がどこにいるかは確率的であり、全てがそう動いていると解釈することにより、多世界が並行して存在することを認めた場合、例えばこのブログをお読みになっている状態と、居眠りしている状態は平行世界に同時に存在しうると考えられます。パラレルワールド的に物を見た場合、明治維新があった世界となかった世界も同時にあることになるのですが、両者は干渉し得ないというのをデコヒーレンスと解釈しても、私共の現実世界ではそういう理解でも良いように思います。

 そう考えると、自分が親切に対応出来た時と、上手く対応出来なかった時も。ポジティブに物を捉えた時とネガティブに捉えた時も、平行世界に同時に存在し得ます。
 しかし、それらはデコヒーレンスによって相互干渉が出来ないため、結局、今生きている自分は、虫の居所のせいなのか、機嫌のせいかはともかくとして、今ある結果を引き受けていくしかありません。量子論的に物を考えたり、そういう世界観を認めるのは興味深いのですが、行動の帰結と責任、そしてこれからの対応を考えるのは、今、ここで、の自分になるわけです。そして、よりポジティブに、温かい対応を常に心がけることで、より良い平行世界を選択出来るとも言えましょう。

814.死にさえしなければどうにかなる

2023.05.07

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

イタリア語の諺より。
 
 とは、死にさえしなければどうにかなるものだ、というものです。ちょっと、ブログの仕様でイタリア語を投稿しようとするとエラーになるので今回書けなかったのですが、直訳すると、死を除けば、全てのものには治療法がある、という意味です。

 メンタルヘルスに関わっていますと死にたいと言われることがしょっちゅうあるのですが、どなた様にも申し上げさせて頂きたいのは、本当に、生きてさえいれば何とかなるということです。
 希望が持てなくても、とりあえず今日を生き延びて欲しい。

 生きてさえいさえすれば、徐々に回復することもあるのですから。

 その一助となれるよう、鋭意治療に励みたいと思っています。

813.他人は変えられない、と思っておく

2023.05.06

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 他人というのは、通常の定義では親族は除いて考えるわけですが、本稿に限っては、自分以外の人物を、親兄弟も含めて他人と仮に定義しておこうと思います。

 心療内科に来てご相談を頂く場合、家族の無理解、というものは増悪因子として割と頻繁に伺います。

 さて、無理解があった時、どうしたらよいのかということになります。

 もちろん、医師や心理士から詳しく説明してくれれば分かると思うので、話して下さい、という要請があれば、医療機関としてこれに応じています。聞く気がある方、理解力がある方がいらして頂く分には問題はありません。しかし、そうなることは実際問題は稀なことが多いです。

 無理解ゆえに、家族が心療内科や精神科に通う行為自体を否定したり、そもそも、通院していることを家族に切り出せない状態だったりすると介入自体が大変です。
 中には、そういうご家族を変える方法がないかという風にもご相談頂くことがありますが、家族や他人を変えようというのはだいたいセラピーの方略として上手く行かないものです。要は他人は変えられないと思っておくことが大事なのです。
 もし、変えることが出来るのであれば、それは自分が先に変わり、相手に対する影響力の行使の仕方が変わった時です。つまり、相手を変える良い方法は自分が先に変わることなのです。そして、そうやって起こる変化は、あまり沢山の量ではないと考えられます。

 ですので、他人は変えられないと常々自覚し、変えられるのは自分自身と腹を決めて頂くことが重要です。
 その覚悟が決まれば、後は、状況に応じて具体的な落とし所を私共とご相談させて頂くことになるのではないかと思っています。

812.憧れと自覚

2023.05.05

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 来る5月7日に、東京オカリナカルテットと言って、私の恩師でもある世界的オカリナ奏者、大沢聡氏が、トップ弟子を3名率いて、複数管オカリナによる四重奏のコンサートに来られます。当院のすぐそばの科学館ですので、予定の空いている方はぜひぜひお勧めです。

 不覚にも師匠のCDが去年出ていることに気づいておらず、この連休のオカリナフェアにて入手して参りました。最近はGoose effectというグループでオリジナル曲を演奏されています。CDを聞いた所、一音一音がとても素敵で、ノリも良く、技術も確かでため息の出る演奏とはこのことです。
 ドレミファソ、と吹くだけでもとてもセクシーな演奏で、素晴らしいなぁとまた惚れ惚れと聞いていました。

 影響されやすいのですぐ真似する訳なのですが、真似の出来る所と出来ない所があるわけです。

 もちろん、世界一の先生ですから、私がすぐに同じにはならないわけですが、学ぶはまねぶから来ているとも良い、憧れて真似をするのは上達の基本と思います。そんな話を、応援してくれている人に話した所、松原の演奏もそれはそれで良いのだと言って頂きました。

 自分の場合、ジャズはそもそも聴いている経験値が少ないし、聞けないことはないですが、普段から浴びるように聞くかと言えばそういうこともありません。優秀な人に憧れたり、自分に足りない技術は真似したり学ぶ必要はあるのですが、自分の好みは変えられないのだし、無理に、自分がどうしたいかというものがないまま単に真似をするというのも違うのかなとも思いました。

 技術や感性で足りない所は、憧れつつ研鑽を積み、その上で自分はどうやりたいのか、しっかりと方向性を自覚することも大切です。後者のことを忘れず、しっかり肝に銘じておくこともまた重要なのではないかと思いました。

811.器

2023.05.04

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 器、と言っても、人間の器とか精神的なものではなくて、今回は、食器などの方です。

 先日、波佐見の陶器市に行って参りました。有田も含めて陶器市に顔を出すのは生まれて初めてでした。九州に住み着いて20余年経つのですが、未だに一度も行ったことがありませんでした。これまで行っていなかったのは混むのが怖いというのもあったのですが。
 コロナ禍明けで初めてのリアル開催復活ということで、人も多く賑わっていました。
 イベントは夜討ち朝駆けが基本ですから6時台に家を出て、自家用車で大型駐車場~シャトルバスで行って参りました。

 カレーのお皿がひびが入っていたので、カレー皿と、お皿、小鉢、蕎麦ちょこ、急須などを新調しました。

 本当に様々な釜があり、白系、黒系もありますし、モチーフも、金魚、梟、お地蔵さんや昔話、花、幾何学模様など色んな器があります。器の背の高さ、土台の幅、皿の余白や返しの有無、こだわり出すと非常に興味深いです。

 いい歳になったというのもあるのですが、器くらいは気に入ったものに囲まれて生きていきたいとも思います。

 B級品などはすこし焼きに黒い点が混じっているだけで、料理を載せてしまえばA級品とほとんど変わらないものが安く買えたりするので細かいことを気にしなければ良質の品が安価に入手出来ます。ですので、それほど大枚をはたかなくても、普段の買い物と同じ程度の出費で気に入ったものが手に入れられるのは良いことだと思いました。毎年来ようかなと思ってしまいました。

 また欲しい鉢もあるのでまた次回ですね。

 みなさんも、お金に余裕が出来た方は、気に入った器を集めてみられてはいかがでしょう。
 

810.道もの

2023.05.03

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 軸の話として前回すり足をお勧めしたのですが、もう1つ別の方法もあります。
 華道や茶道など、和室できちんと正座をして、背筋を伸ばして行うものです。これらをひとまとめにして、華「道」、茶「道」、の「道」をとり、道もの、と呼んでいます。

 茶道などは、リラックスしてお客様をもてなす、という行為の中にも、だらだらしているわけではない軸があり、お茶を提供する気遣いの中に、姿勢や作法といった簡素化した様式美があります。そういう中に身を置いていると、きちんとした雰囲気の中でも歓待を楽しむというバランスを取っていくことになります。特に女性などは着付けなども一緒に憶えますと、着物が一人で着られるようになりますし、きちんと正座したりあいさつの出来る様はとても美しいものです。そういう、芯の通った美のようなものが内から出来てくると、メイクやアクセサリーでごまかしている美とはまた違う、人間性からにじみ出る美しさのようなものが放たれていきます。お化粧を否定するわけではありませんが、適度なお化粧に加えて、美として実はとても大切な要素が内側からの美になります。

 回復期には道ものへ取り組まれることも時々お勧めしています。この記事を読んで興味をお持ちになった方は、一度、お試し頂いてはいかがでしょう。
 

809.すり足

2023.05.02

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 剣道にすり足という移動法があります。
 重心がぶれずに、隙のない動きです。

 武道の心得のある方には、治療の後半にすり足をお勧めしていることがあります。

 心が動揺していると、当然、体軸も動揺してきます。治療の初期では、いきなり軸を立てるのが難しい時がありますが、軸なり心の芯なりしっかりしてきた時期にはすり足をして頂くことにより、より、しっかりとして頂く目的があります。

 私は身体技法としてボディートークと臨床動作法を主として用いていますが、いずれの方法も軸立てはとても重視されています。特に動作法には軸立ての技法が課題としてわざわざ設けられています。

 しかし、医師や心理士が設定する課題というのも良いのですが、元々すり足の素養があればその練習をして頂くだけでも軸はしっかりしてきます。軸がしっかりすると心の置き所が安定し、多少のことではぶれず、動揺も少なくなります。

 くよくよしなくなってきたり、余暇活動にも興味が出て来るくらいの時期にはすり足をされることもお勧めです。

808.23ヶ月

2023.05.01

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 R3年6月1日より開業し、23ヶ月が経ち、今日から24ヶ月目となります。ここまでやってこられたのはひとえに皆様のご理解とご支援の賜物です。感謝申し上げます。
 スタッフにもいくらか入れ替わりもあったりして、どうにか乗り切りながら運営して参りました。
 
 引き続き、ブログの掲載、および、新患枠を設置し続け、なるべく早く新患の方の診察を執り行うことを今後も継続していきたいと考えています。これからも当院をどうぞよろしくお願い申し上げます。

807.質問する姿勢

2023.04.30

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 時折、質問してきたはずなのに、ご自身の考えを蕩蕩と述べ出す人がおられます。
 だいたい、そういう方はご家族と上手くいかないなど、何らかの緊張関係をお持ちのように思います。

 これを少し心理学的な言葉も用いて紐解いてみたいと思います。

 二重拘束(ダブルバインド)という言葉があります。
「カレー?ハンバーグ?どっちにする?でもミンチこねるの面倒だな。」

 と最後にぼそっと入ると、それは、結局ハンバーグを作るのは面倒くさいからこちらにカレーと言わせたいってことだよね?っていう感じになるんじゃないかと思います。

 っていうことはそもそも2択ではなく、択一の答えなのであって、2択で聞く意味はほぼないということになります。
 どちらもOKであるように装っているけれども、択一の答えしか選ばせないような関係の取り方を二重拘束と言います。

 これを子育てなどでやってしまうと、子どもはどうせ言っても無駄、親の言う選択肢しか選べない、と諦めたり拗ねたりし、それが親子関係に影を落とします。

 子ども相手でも、専門家相手でも、質問した以上は、相手の回答を聞き切ることが重要です。逆に、きちんと聞く覚悟がないならば、軽々に質問するのは良い姿勢とは言えないのではないでしょうか。

 何気なくしている会話でも、親だったり年上だったり、自分のポジションによって相手を二重拘束で押さえ込むことは差し控えたいものです。普段から質問と答えには、ご自身の姿勢作りも問われていると捉えておくことが必要ではないかと思っています。

806.自由連想とアネクドート

2023.04.29

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 日本で有名な精神科医が、フロイトの遺産として最後まで残るのは自由連想であろうと予言したと言います。
 精神分析の多くの概念が時代遅れになっても、確かに自由連想だけは人間の自由な発想として残っています。

 前稿でAIについて触れましたが、患者さんの相談事に対して、自分の体験や伝聞などについて返すことはアネクドートなどと申しまして、ミルトン・エリクソン以来の重要な治療技法となっています。
 AIは人生経験自体がないのでアネクドートを述べることは出来ません。

 その場で当意即妙に思いつく、聞き手の体験談などは、押しつけになってはいけないのですが、二人で行う自由連想としてのアネクドートは臨床の場を豊かにし、相談者の発想の硬さをブレイクしていきます。

 AI時代に残るのは、医師の温かみと覚悟、そして、技法的には自由連想とアネクドートではないかと、ふと思いました。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分