890.そろそろと治る
2023.07.22
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
当院にも双極性障害の方がいらっしゃっています。
躁状態は幸せなのか、やる気に溢れ、アイディアが湧き出てきて、恐怖に打ち克ち、行動力に満ちています。
あの素晴らしい日々を取り戻したい、と良く言われるのですが、その状態の時は、誇大的であり、万能感があり、観念奔逸・多弁・不眠不休・浪費・易怒性があり、周りは実は結構な迷惑をしています。ワンマン社長さんの一部は未治療のこのタイプの方ということも少なくありません。
ニュートラルな状態に保つことが最も治療的なのですが、ちょっと躁状態よりはちょっとうつ状態の方が大人しくて無害ということもあり、ニュートラルから少し大人しめを目指して治療される医師が多いように思います。しかし、それはバラ色の人生ではない、と、当事者の方からお叱りを受けることもしばしばあります。
しかし、躁状態に転ずることを躁転と言いますが、躁転は良くないと考えられているのです。気分障害に於いて最も予防すべきは自殺ですが、次に予防したいのは躁転です。お漬物に味がしみるようにそろそろと治る方が、実は安全であり、周囲の家族なども安心なさいます。
そろそろと治っていくことへの不満や不安も受け止めつつ、ということになりますが、実はそろそろと治ることはとても大切な歩みではないかと思うのです。