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1291.ロブ・マキューエン

2024.08.22

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 ロブ・マキューエンは、カナダの金鉱産業、ゴールドコープ社のCEOを務めた人物です。現在は会長兼オーナーのようです。

 同社はトロントに本社を置く、小さな金鉱会社で、債務・ストライキ等で産出を諦めざるを得ないほどの窮状にあえいでいました。かなりの金鉱床を発見しなければ、レッドレイク鉱山は閉山に追い込まれ、同社も倒産することが判っていました。彼は跡取り息子でもない上に、鉱業関係の経験すらなく、買収合戦に参加して同社の株式の過半数を手にしたに過ぎないビジネスマンでした。
 誰もが彼がこの会社を救えるはずがないと批判しましたが、彼はそれを無視してこらえていました。
 1999年、マサチューセッツ工科大学で開催された若手社長向けのカンファレンスで、たまたまLinuxの話を聞いたのでした。

 会社に戻ると彼は1948年依頼の地質データを全部電子ファイルにして公開し、200トン近い金が何処に埋もれているか世界に問いかけることにしました。
 自社の鉱山データなどは隠蔽秘匿が常識の中、鉱業の素人だからこそ、Linuxにヒントを得て、世界に公開しました。
 2000年3月、総額57万5000ドルの賞金を掛けて、ゴールドコープチャレンジを開始しました。
 
 このニュースはあっという間に広まり、15カ国、1000人以上が地質データと格闘しました。

 数週間で世界中から提案が寄せられましたが、地質学者以外の提案もありました。

 大学院生、数学者、コンサルタント、軍の士官、など予想外の人物からも提案があり、分野としては、数学、先端物理、人工知能、CG、それらの組み合わせなどが使用されていたと言います。鉱脈の可能性が示唆された場所は110カ所あり、その半分はゴールドコープが気づいていないものでアリ、その80%で実際に大量の金が発見されたと言います。
 ゴールドコープチャレンジで発見された金は250tにもおよび、このコラボレーションにより探査期間を2~3年短縮できたと言います。

 この業績によりゴールドコープ社は衰退していたオンタリオ州北部の鉱山を業界トップクラスにおしあげ、1億ドルの不振企業を90億ドルの巨人にしました。

 マキューエンは、業界慣行に逆らって、企業財産であるデータを公開し、鈍重な探査プロセスを分散型金発見エンジンに変化させました。

 このような素人だからこそ出来る慣行の打破であったり、オープンソース化して集合知を得る方法はウィキノミクスと呼ばれ、その後のイノベーションやビジネスに大きな影響を与えました。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分