116.健全な諦め
2021.06.04
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。 1日より六本松地区で開業しましたまつばら心療内科の松原慎と申します。 先日いらした方は、プライドも高く、能力も高い人でした。 背も高く、がたいも良く、本気で怒ってこられたら大概の人は震え上がりそうな迫力があります。 少し気分障害の可能性がありましたが、万能感が出てアイディアが次々と出て来る時があり、その時がベストで、そうなれないときに罪悪感や不全感を感じられるようです。 典型的な躁うつ病の陥るパターンです。 気分障害、躁うつ病の方は、あの輝かしい時期に戻りたい、と言う願望を常に持っています。 しかし、次々とアイディアが浮かんで命令されると下の者や家族はついていけずたまったものではありません。本人の感じる万能感や多幸感ほど、周りは幸せに感じていません。そのことに気づいてしまうと又うつになり、というのではなかなか躁うつの波から脱却出来ません。 双極性障害(躁うつ病)のベストな状態は上がったときではなく、ニュートラルの位置と言われています。そして、次善の状態はちょっとうつ気味でおとなしい方が周りは生きやすくなります。 いつもてっぺんを目指して、てっぺんでないと不全感を持つのは生きててしんどくないですか?と申し上げてみました。 ニュートラルを目標とし、てっぺんを「健全に諦める」。これを以て「健全な諦め」と称しています。健全な諦めをしませんか?というお話しの中で、大きな人の目に涙が浮かんでいました。やっと楽になった、と荷を下ろされた瞬間でした。 もちろん、必要なお薬も出してみましたが、前医とは診断も変更したので、私なりにその方に合うものを考えてみました。 当院ではじっくりお話しを伺った上で、自分をがんじがらめにしてきた呪縛を解きつつ、適切な薬物の提供という両輪で、生きづらさへの援助を目指しています。