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1264.瘀血(おけつ)

2024.07.26

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 お臍と腸骨棘の間に、漢方の腹診で言うところの瘀血というところがあります。
 まだ私の漢方診察はレベルが高くないのですが、先日漢方のセミナーで腹診を一通り学んできました。

 漢方には気血水という3つの概念があります。いわゆる西洋医学的な空気、血液、水分といったものより少し広い概念で、空気や血液そのものではないようです。
 血は、婦人科的なうっ滞なども示しているようです。
 その瘀血は、パニック障害などがある場合、マッサージをして瘀血の圧痛を解除すると覿面に効くというので、最近は、腹診を行って所見を採るよう心がけています。背中を一通り見るボディートークもなかなか診断価値が高いように思うのですが、瘀血の良いところは数分マッサージするとそのうっ滞が取れ、パニックもかなり楽になる点です。また、場所が判ってしまえば自分でも瘀血マッサージを施行することが出来ます。
 最近は自律訓練法の指導だけではなく、瘀血マッサージも取り入れているところです。もちろん抗不安薬の頓服も処方できますが、色んな方法でパニックに対応できるよう診察の中で指導が出来るところが良いところかなと思います。

 もしや自分も瘀血に何かあるのでは?と思われた方はご相談頂ければと思います。

1263.地球を蹴飛ばす

2024.07.25

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 急いでいる時、カツカツカツカツと地面を蹴り飛ばして歩いていませんか。

 物理の世界には作用反作用の法則というのがありまして、押せば同じ力で押し返されるといったものです。
 上記のように歩いている若手の方に、地球を蹴飛ばすと、地球に蹴り返されるよと申したことがございます。

 強く地面に当たると、同じ強度の衝撃が自分の脚にも来ますから、それが疲労を生んでしまうのです。

 まあ、地面くらいだと、蹴飛ばしたってものは言いませんが、地面を蹴飛ばしているようなあり方の時って、周りの人にもそんな感じで当たっていないでしょうか。人間関係は不思議なもので、ネガティブなものを相手に向けてしまえば相手からも同様のものが返って来がちです。
 余裕があるなら、猫のようにしなやかに地面を歩いてみたいものです。

 地球を蹴飛ばしながら歩いていそうな方、少し足首を和らげて、優しく着地してご覧になってはいかがでしょう。

1262.訪問看護の重要性

2024.07.24

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 当院は小さなクリニックなので、訪問看護ステーションは併設しておらず、近隣の訪問看護ステーション様と連携しながら治療に当たらせて頂いています。訪問看護ステーションはたくさんありますが、当院では数カ所と連携させて頂いています。
 ありがたいのは、24時間電話対応してくれるところなどは夜中にお薬を頓服して良いか聞きたくなる人、心細くなって看護師のアドバイスが欲しい人などに対応して頂けるので助かります。翌営業日にはファックスなどで報告書が来ますので、当院でも大体何があったか把握できるので安心です。
 訪問看護に関わって頂いて、お薬のアドヒアランスが改善して、幻聴が消えたり、過剰な内服が改善したりした方もおられますし、酒瓶が多いかなど生活態度も確認して頂けるため、実際の現場で生活の息吹を感じながらの指導が出来るところが良いところです。

 具体的で生活に根ざすサポートが必要な方は、訪問看護の導入も検討しますのでご相談頂ければと思います。

1261.公理から考える

2024.07.23

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 数学などには公理公準などと言いまして、証明できないが自明の理として定理などの証明の際前提として用いるものを公理などと申します。例えば幾何学ですと

平面図形におけるルール ― 公理

 という5つが幾何学の公理とされています。

 諸々の定理などはこれらの延長として証明済みのものを言います。

 セラピーの世界でも、こういう風な前提のようなものはいくつかあります。

 男性は言ったことを忘れやすいし、女性は聞いたことを覚えていることが多いとか、
 生物学的に、男性は一夫多妻でも子孫を残す方向を目指すし、女性は妊娠授乳の負担もありパートナー選びは慎重になりやすいとか。
 
 全てではありませんが、このブログに書いてきたいくつかを公理や定理のように活用しみると、割とご相談に乗りやすいことがあるように感じています。

 色々なものを整理されたい時に、公理的なルールから入るのも良いかもしれません。

1260.辛抱強く待つ

2024.07.22

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 不適切行動がある場合、さっさと止められれば問題はないはずですが、やめられない止まらないがあるから問題が残ることがあります。飲酒や喫煙などもその類いと言えましょう。

 中には、ある程度強制的に入院でもした方が良い場合もあるかもしれません。

 当院はクリニックですので、保護室などを使用した強度の高い治療は出来ない前提なので、不適切行動があっても理性的に自分で行動を変えていって頂くことを応援していくことになるでしょう。

 良い方法やアイディアは提案させて頂くのですが、その提案を飲むのか、実行するのかはあくまでもクライエントの自由ですから、少し飲んじゃった、と言ってやってくる患者さん達に、やめた方が良いんだけどなぁとは思いつつも、やんわりたしなめつつ、酒量など控えていくように促しています。昔のドクターだと怒る人も居たようですし、医師の説得の大半は「脅迫」です。具体的には、そんなに飲んでると肝硬変(病気)になりますよ、というやつです。
 
 しかし、馬を水辺に連れて行くことは出来ても水を飲ませることは出来ないと言いますから、実際に行動を適切化して頂くまでには辛抱強く待つ必要があります。良好な治療関係を維持しつつ、時には改善を期待しつつ辛抱強く待つ。そんな風にしながら外来に立たせて頂いております。

1259.感覚過敏

2024.07.21

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 発達障害の人には感覚過敏がある場合があります。
 匂いや触覚に過敏な場合があります。

 ハンドルは握れるけれどもハンドルカバーがついたら違和感がありすぎてそのハンドルが握れないとか。手袋をすると上手く触れないとか。そういうこともあるようです。
 高度に知的な方だと、コミュニケーションは上手に取れたり、人間関係も良好だけれども、発達特性は強めという人もおられます。

 最近は、若い方にも発達障害という言葉が浸透してきている一方、変わっていて面倒くさい相手に、「発達障害ではないか」とレッテルを貼って、諦めたり辛抱する理由にしたりする場合もあるようです。

 いずれの場合も、専門家がきちんと評価した上で、生産的な対処法や周囲に配慮があるのであれば具体的で実現可能な合理的配慮を求めるなどを行っていくことになります。

 感覚過敏などで、自分がそうかも、と思われた方は、一度ご相談頂ければと思います。

1258.前進ばかりが治療ではない

2024.07.20

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 なかなか良くならないと、もどかしく感じますよね。
 私自身もせっかちな性格をしていますから、早くよくなれ、とさるかに合戦のカニの子のように普段から念じているわけですが。

 しかし、よく考えてみれば、悪化していないとか、怒りだしていないとか、以前取っていた不適切な行動が減ったり緩和されていることだってあるかもしれません。飲酒量に気をつけるようになったとか。悪化させない、平穏な生活をキープできる、というのも大事な治療になりますし、平穏な生活が送れていなかったのであれば、十分な前進と捉えて良いと思います。

 ブリーフサイコセラピーで有名な、ある先生が、授業の際、微動だにしない教卓を指して、「すごい勢いで動いてますよね?原子が」なんて仰ったとか。静止しているように見えても、原子にせよ、我々にせよものすごい速度で動いていたりします。地球の公転速度は時速で言えば10万7000kmほどですし、赤道上の自転速度は1700km/hになるそうです。

 まあ、そういう物理的な豆知識はさておき、見方によっては良く動いているということはあり得るわけですから、一見停滞しているように見えても、維持しながら生活していること自体が前向きに捉えられるのではないかと思います。

1257.エントロピー

2024.07.19

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 エントロピーとは、Wikiによりますと、熱力学や統計力学において定義される示量性の状態量とされます。熱力学では断熱条件下の不可逆性を表し、統計力学においては、系の微視的な「乱雑さ」を表す物理量という意味付けがなされました。
 統計力学での結果から、系から得られる情報に関係があることが指摘され、情報理論にも応用されるようになったと言います。
 要は散らかっている、的な感じで、片付けられていないお部屋を指して、「エントロピーが増大している」などと言います。

 片付けはエントロピーを下げることですが、エントロピーは放っておけば増大する傾向にあるため、エントロピーを下げるためにはそれなりにエネルギーを投入する必要が発生します。

 つまり、片付けに使う熱量を合計するならば、整頓が出来たとしてもその部屋に投入されたエントロピー量は上がるとも言えます。

 どうしてもエントロピーは増えてしまうため、普段はなるべくエントロピーが増大しないように気を配り、散らかってしまった時は労力を掛ける心構えで挑むことになります。

 片付かない時、少しエントロピーという概念を念頭に置いても良いかもしれません。

1256.成績と睡眠

2024.07.18

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 十分な睡眠時間は、学業成績にも必要不可欠なことが知られています。
 Gruberら(1)は、睡眠時間と学業成績には正の相関(多ければ、結果が良いということ)があることを報告しています。また、Wangら(2)は、睡眠時間が8時間を下回ると、成績が低下すると警鐘を鳴らしています。Curcioら(3)は、学業成績や認知能力は不十分な睡眠で下がり、十分な睡眠で改善すると指摘しています。

 私も従来睡眠を軽視しがちな生活を送っておりまして、反省しないといけません。

 結局、短時間睡眠であれば、勤務医時代は会議やカンファレンスで寝てしまうということが起こり得ていました。
 受動的に人の話を聞くことは眠くなることにつながりやすいですが、睡眠時間がたっぷり取れていれば、つまらないところは流して重要なところを記憶するなど取捨選択などの認知能力も上がっていた気がします。

 温かい布団でぐっすり寝る、こんな幸せなことはない、というのはドラえもんののび太君の名言だったような気がしますが、戦乱のない日本に生まれ育ち、温かい布団で命の危険なく眠れるのであれば、その幸せを最大に享受した方が良いですし、睡眠は勿体ない時間の使い方ではなく、幸せの時間だから増えて良い、と認識して頂ければ、頭の切れも戻ってきてより健康になるのではないかと思います。

(1)Gruber R, Laviolette R, Deluca P, Monson E, Cornish K, Carrier J. Short sleep duration is associated with poor performance on IQ measures in healthy school-age children. Sleep Med. 2010 Mar;11(3):289-94

(2)Wang G, Ren F, Liu Z, Xu G, Jiang F, Skora E, et al. Sleep patterns and academic performance during preparation for college entrance exam in Chinese adolescents. J Sch Health. 2016;86:298‒306

(3)Curcio G, Ferrara M, De Gennaro L. Sleep loss, learning capacity and academic performance. Sleep Med Rev. 2006 Oct;10(5):323-37.

1254.コアは一つ

2024.07.17

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 本質的に物事を理解したい時に、色々、組織の事情や背景が絡んできて、現実の汚泥に汚されていくと、なかなか物事の本質が見えない時があります。
 例えば、宗教であれば、本質的には、神仏の前で魂は平等なはずです。
 しかし、在家と出家の差違はあり得ますし、組織になってくると、僧侶や神職にも位階が発生することもあるようです。

 より深く協議を理解し実践している人と、まだそうでない人には学力同様、知識や経験に差があるのでしょうけれども、それが位の上下として認識されるようになると上下の区別なり差別が生じてきたり、その際は結局献金額だったりと、なかなか汚いように見えてしまうこともあるかもしれません。

 しかし、人が集まり何かを運用するとどうしても組織は出来てしまうし、そこの命令系統に上下が発生するのも仕方がないことなのかもしれません。

 私の実家でも、事務総長だったか偉い人になった先祖がいたようですが、その後は、説法するのに最低限必要な位までしか取らなかったようです。本質的には神仏の前では平等という考えだったのではないかと思います。衆生済度なり、軸になる考え、一つのコアを重要視すれば、些末な都合は吹き飛んでいくことがあります。

 最も重要なコアを一つ理解しておけば、色んな迷いから霧が晴れることがあります。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分