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1274.もっと貪欲に

2024.08.05

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 先日ある親しい友人から、もっと貪欲になれば良いのに、と叱咤激励を受けました。
 物欲にせよ、知識欲にせよ、向上心にせよ、ある程度あるとは思っていたのですが、友人が見ている側面は、もっと出来るであろうにちょっと残念、といった所でしょうか。

 都度都度、真剣に取り組んでいたとしても、オカリナの練習などで良く気づくのですが、指摘される点は隙がある箇所ばかりです。
 精度を上げていくためには、この隙を埋めて充実した音を出していく必要があります。

 特に音の始まりは良くても終わり方が尻切れトンボ、までは行かないまでも、トッププロと比べるとやや隙間がある訳です。

 初心者の頃とは比べものにならないほど精度を上げてきたわけですが、結局は同じような指摘と改善の繰り返しで日々の精進があります。

 音が出せない夜でもレッスンの動画を見直すとか、見直しながら、楽譜にチェックを入れていくとか、チェックを入れた上でシャドウイングを行うとか、模範演奏を見直す、聞き直すなどやるべきことはあります。もっともっと、自分の向上には貪欲でありたいと、改めて思いました。

1273.卵を一つの篭に盛ってはいけない

2024.08.04

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 資産運用で用いられる警鐘を表す言葉として、「卵を一つの篭に盛ってはいけない」という物があります。
 これは資産を一つの株で運用した場合、資産全体が大きな危険性にさらされてしまうため、出来る限り資産は分散して持つべきだと言うことを表す言葉です。これは経済学の原則となっています。
 にもかかわらず、日本人は国内で資産を運用することが多く、外国の資産で運用している人は少ないと言われます。これはホームバイアスとも言うようです。

 これを読んで私自身が運用を国内でやっているのでドキリとしました。

 なんだかんだいって日本の方が信頼性があるとか、外国の物だと損した時に逃げられたら怖いとか、やはり馴染みがないが故に、心の中で自分の中の親近感などを合理化して理屈づけしてしまっているのかもしれません。

 自分が何かチャレンジして行きたい時に、ホームバイアス等に掛かり、結局は卵を一つの篭に盛って運んでいる、のと同じことになっていないか、時には立ち止まってチェックすることも必要かもしれません。

1272.親近感バイアス

2024.08.03

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 行動経済学には親近感バイアスという概念があるようです。
 シンガポール国立大学の周らは北京の大学生に対して、以下の2つの質問をしました。

①過去のある日の北京の最高気温が偶数か奇数か当てられれば1000円もらえる。
②同じ日の東京の最高気温が偶数か奇数か当てられれば1200円もらえる。

 日本人なら②を選びそうな物だと思いながら読んでいましたら、北京の大学生ということで、39.6%が①選んだようです。

 これの表すことは人間は多少経済的に損をしても親近感のある物を選ぶ傾向がある、といいます。
 このような性質を持つ人達は脳内の伝達物質であるセロトニン受容体に関わる遺伝子の特定のパターンが関与していると、周らは主張しています。

 大竹はこの例を引いて、ご当地グルメには、どこにでもありそうだがちょっとだけ違う物が見られやすいのは、この親近感バイアスによるのだと述べています。

 確かに九州のご当地グルメとか言うと、門司港焼きカレーなんてありますけど、カレーライス?ドリア?のような物に外からバーナーで焼け焦げを作り香ばしくして提供するような物で、本質的にはカレーですから、みんなが親近感を覚えますい、カレーに間違いなしということで安心して手を出せる代物です。宇都宮餃子なども、どこがご当地なのか今ひとつよく分かりませんが一大消費地というだけで、要するに餃子でしょ、という風な妙な安心感はあります。つけダレがちょっと変わっていたとしてもご愛敬であり、ロシアンルーレットのように激辛餃子などが混じっていたらちょっと引きますから、ご当地グルメはやっぱり親しみを持ってもらえる物が良さそうです。焼き鳥などに至っては、ご当地と言いうるかどうかがだんだん怪しくなってきている気すらします。

 親近感バイアス、というのが関与していたとしても、親近感を持ち、食欲をそそられればやっぱりちょっと食べてみたいと思う物です。暑い夏、皆さんはどんな物を召し上がって夏を乗り切って行かれますか。

1271.現状維持バイアス

2024.08.02

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 人間はある物を保持している時、それを保有していることの価値が高くなり、それを失うリスクを高く見積もりがちであり、このことを、現状維持バイアスと言うようです。

 例えば、ある資格であったり、専門学校卒であったり、その人があるスキルを獲得するのに、学費や年月といったそれなりのコストを掛けていることがあります。そのため、現状維持バイアスが働くと、折角その資格を持っているのだからその業種に就かなければ損だとか、その経歴を活かせる選択をしたい、等と言うことがあるかもしれません。
 ところが、その資格などが本人にとってはそれほど合っていないとか喜びを感じていない、むしろ重圧を感じたり、デメリットを感じていたりする、ということであれば、思い切って現状維持バイアスを棄却して、新しいチャレンジをする方が望ましいことがあります。

 負けているギャンブルから撤退しにくいのも掛けているコストを回収しないと戻れない、という心性から、思い切って損切りが出来ないことがあるかもしれません。

 ですので、自分が持っている資格や経歴が、業界的に十分に優位性があるのかないのか、それを活かそうとすることが自分にとって喜ばしいことなのかそうでないのか、今一度考え直すことと、より良い決断が出来るかもしれません。ご自分で判断なさりにくい時は一度ご相談頂ければと思います。

1270.利他性と遺伝

2024.08.01

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 利他の心や、危険回避度といったものは、社会を構成して生きる人間にとって、より生存を確実にするために必要な要素といわれています。
 それでは、それらの要素は、移転的に決定されるのでしょうか?あるいは、後天的な教育によって得られるのでしょうか?

 それらを調べるためにはいくつかの方法があります。
 1つは、教育年数の変化が本人の選択の影響を受けないで発生するような状況を利用する方法です。ウガンダでは義務教育制度が年によって変化してきたことを利用して、バウアーとチィティロバは教育年数が長い人ほど時間割引率が低いことを明らかにしました。
 もう一つは、双生児研究です。
 一卵性双生児と二卵性双生児の間における選好ががどの程度似ているかと言うことから選好の遺伝割合を調べる方法です。
 一卵性双生児は同じ遺伝子を持っているはずなので、選好が遺伝と強く関係するならば、2人の選好は同じになると予想されます。二卵性双生児は平均すると50%の遺伝子が同じになるため、相関は平均すると50%になるはずです。
 サニエリは危険回避度や利他性の約20%が遺伝的要素で説明できることを明らかにした一方、家庭環境のような共通環境要因はあまり重要でないことを明らかにしています。
 時間割引率については、双生児へのアンケートをもとにした大竹らの研究により遺伝的な貢献は25%程度であることが士支えれています。
 つまり、75~80%は遺伝外の要素で時間割引率や危険回避度が決定されているわけで、選好の特性の決定には家庭環境や教育による影響が大きいということになるのでしょう。

 先のために我慢をしたり、他者への思いやりを持ったりすることには7~8割方、家庭環境や教育の影響があるということから、親としては、思いやりの心を持つ子に育てるために、一層留意する必要がありそうです。

1269.命令文+or

2024.07.31

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 緩和ケアのに従事していた時に精神腫瘍医の研修を受けたことがあります。
 医師の集団が本気でマニュアルを作っていくと非常に綿密なものが出来ていくようで、感心した覚えがあります。

 その中で聞いたことだったのかもう忘れましたが、医師が患者を説得する際に最も用いている手法は、命令文ではないにせよ、

 お勧め文+or、すなわたい、「この治療をお受けになった方が良いですよ」+さもないと悪化する恐れがあります、系の話です。教育系の友人に聞いたところ、学校の教師なども、全員ではありませんが、○○しなさい、さもないと、というような言い回しをする人がいるらしく、医師にせよ教師にせよ、「脅し」を説得に用いた場合、その場の雰囲気はあまり良くないものになるような気がします。

 私も熱心に治療を勧めようとするあまり、説得の時の圧力を感じさせてしまうことがあったようです。最近はそのようなあり方を反省して、提供はするが、その方法を採らない自由もある、という風に少し手綱を緩めています。患者さんにも、やんごとなき事情があったり、言ってないけど秘密があったり、経済的な理由だったり、宗教上の理由だったり、単なる偏見が取れてなかったり、色々ありますが、そのままうんと言えなかったり、うんと言っても実行できないことは良くあることです。

 できるだけ、命令文+or(もしくは、お勧め文+or)から離れて、言うこと聞かない自由のある人が相談に来られている、と気楽に構えるようにしたところ、最近の手応えは悪くありません。

 みなさまも、相手の自由や権利を認めつつ、違う立場もありなんだという風に楽に構えて人とお会いになってご覧になってはいかがでしょう。

1268.石が心臓から落ちる

2024.07.30

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 ドイツには石が心臓から落ちる、等という言い回しがあるそうです。
 意味は、心に使えていたものが取れて楽になるといったような意味と言うことです。

 腹に一物とか、憤り(息の通り)、息詰まり(行き詰まり、生き詰まり)等という表現は日本語にもありますが、石が心臓から落ちるというのは少し日本人には耳新しい言葉かもしれません。

 ストレスがあると、すぐにイライラしてしまったり、子供等弱いものに当たってしまったりしてしまいがちです。

 そういう時はストレスがたまっているサインですから、もしやと思った方はご相談頂ければありがたいと思います。

1267.時間割引率

2024.07.29

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 マシュマロテストのところで述べた続きです。
 やる気・協調性・リーダーシップという非認知能力は、社会で成功するために重要なことが知られています。最近は経済学でもこれらの能力の効果が分析されています。
 最近の実証研究では、高校時代のリーダーシップの有無や忍耐強さや協調性が所得にプラスの影響を与えることが示されました。
 なので、大学の推薦入試に生徒会長をしていたなどが加味されるのは、根拠のあることと考えても良さそうです。

 このような認知能力の一つに時間割引率があります。
 時間割引率とは、将来のことをどの程度割り引いて考えるかという程度を示すものです。

 実は、学歴が高いほど、所得が高いほど、時間割引率が低いと言うことは実証されてますし(1)、親の貯蓄行動が子供の教育や貯蓄に影響を与えていることを示した研究もあります(2)。米国のデータにて親子の資産間に相関がある(3)ことも明らかになっており、ウガンダのデータでは高学歴者ほど時間割引率が低い(4)ことも示されています。
 ただ、相関関係が因果関係とは限らないので注意が必要です。

 今回は、なかなか普段目にしない、時間割引率という言葉を紹介し、目先の利益を我慢して将来増える利益を狙える身の置き方が行動経済学的にも色々実証データがあるというお話をさせて頂きました。

 詳細をお知りになりたい方は大竹文雄著、「競争社会の歩き方」などご参照頂ければと思います。

1266.イリュージョン

2024.07.28

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 先日催し物にプロの手品師の方がいらしていました。
 イリュージョンって言うらしいのですが、とても上手でびっくりしました。

 女性アシスタントと手品師の箱と外の体の入れ替えであったり、さっきまで火を噴いていた箱からウサギさんが出てきたり、2羽の鳩が鵞鳥になったかと思えば、鵞鳥が縦に裂けたかと思えば2羽の鵞鳥に分裂する、しかも両方生きている!なんていうすごいのがありました。
 不思議だなぁと思いつつ、まあ種はきっとあるはずなのですが、種が判らない方が結局純粋に楽しめるのかなとも思い直して、種を調べるのは止めました。

 暑い毎日ですが、少し元気を頂いたので、また日々の診療を頑張っていけたらと思います。皆様は夏休み期間、何かイベントにお出かけになりますか?

1265.マシュマロテスト

2024.07.27

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 マシュマロテストというのは心理学者のミッシェルと正田が行った有名な実験です。
 子供の頃の忍耐強さの有無が、その後の社会での成功に大きな役割を持つことを示したものです。

 具体的には、4,5歳の子供にマシュマロを1個見せて、実験者が部屋に戻ってくるまで食べるのを我慢出来たらもう一つ上げる、と言って約20分後に戻ってくると言う実験です。彼らは、その時に食べるのを我慢出来た子供と出来なかった子供を10年後に追跡調査しました。
 さて、その結果はどのようなものだったでしょうか?

 我慢出来て、マシュマロを2個もらった子供の方が、そうでない子達よりも成績が良く、リーダーシップもあり、社会性を備えていたことが示されたのだそうです。

 この結果は、忍耐力という非認知能力の幼少期での形成の有無が、その後の人生に大きな影響を与える、と言ったことを示しているようです。

 簡単にそうはいうものの、こういった忍耐力がつくためには、20分経った時に必ずもらえると大人を信用している必要があるでしょうから、待たせたあげく、取り上げて親が食べてしまうような家庭であれば、当然待つだけ損ですから、待てたら2個なんて、信用できるかってことで目の前の1個に飛びつけば、確実に1個は食べられることになります。子供にとって20分待つというのは永遠に近く感じるほど長いかもしれませんから、イライラしながら待つのは厳しいものがあります。これらを乗り越えるためには2個もらえるのだ、というポジティブな結果を信じ続けて自分を鼓舞していかなければなりません。つまり、我慢出来た子達は良い結果を予想して、軽挙妄動することを抑制することこそ、良い結果につながるという体験を既に積み重ねていたであろうことが推測されます。

 お話を伺っている中で、この方はマシュマロテスト受けたら我慢出来たのであろうとか、我慢出来なかったのであろうとか、想像することがあります。

 これらには親の教育も非常に影響しているようです。
 その件についてはまた別稿でも考察してみたいと思います。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分