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1314.メンタルヘルス治療の3本柱

2024.09.14

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 産業医で医学博士の森本英樹先生によりますと、メンタルヘルス治療の三本柱は、

①休養
②薬物療法
③精神療法

 と言います。
 
 他の専門家が書いても、大体同じことを言うと思われます。

 患者さんの中には、休養していると落ち着かないとか、休んでいることに罪悪感を感じるなんて方もおられて、多少働いてもらう方が良いケースもあるのかもしれませんが、自分はそう思っていても、上司から見たら、勤務頻度が不規則になっていたり集中力が低下してミスが増えていたりするので、自分が働きたいという意欲を持つだけでは、あるいは、休業の罪悪感を持ちたくないから働く、というのは、労働の提供を給与と交換するという計画から見れば不十分な労働を提供していることになり、フェアとは言えません。
 そういう罪悪感のようなものを減らすのに精神療法で考え方を柔軟にしたり、SSRI等を用いてセロトニンを増やし、抑うつ気分を解消して頂いたりします。

 当院では皆様の状況に応じて、心理検査を行ったり、内分泌学的な検査を行ったり、処方をしたり、抗うつ薬が飲みたくない人には漢方で対応したり、心理師によるカウンセリングを提供したりと色んな方法で対応をさせて頂いております。ご興味を持って頂いたらお問い合わせを頂けますと幸いです。

1313.期待理論

2024.09.13

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 米国の心理学者にVroom氏というか他がおられます。彼の提唱した期待理論というものがあるのですが、何かを行う時の動機付け、モチベーションを上げるためにはどうなっているのがよいかという理論です。
 その要諦は3つあります。

①どこまでやればよいのかめいかくで、
②どうしたらよいのかの戦略が立っており
③達成した時の成果が魅力的

 とい3つがそろうと何かを行うモチベーションが上がるのだそうです。

 チームで何かに突き進む時、部下に仕事をさせる時、などに、俎上に上がっているプロジェクトが、Vroomの期待理論を満たしているのか、ということを検討するのが良いようです。
 もし、何か欠けているのであればそこを改善すると、チームのメンバーのモチベーションを上げられるかもしれません。

 やりながらもやっとしていることをお抱えの方がおられたら上記の3つを見直して頂いてはいかがでしょう。

1312.勤務間インターバル

2024.09.12

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 みなさんは、勤務間インターバルという言葉をお耳にすることはありますか。勤務間インターバル制度とは、仕事の就業から次の始業までを一定の休息時間を確保するという考え方です。
 例えば21時まで残業して9時に出てくるとなると勤務間インターバルは12時間となります。

 夜遅くまで仕事をした翌日は疲労がたまり、また、睡眠不足になりやすいために、パフォーマンスが上がらないことがあり得ます。この制度は、集中して仕事をするために休息時間の確保が必要だという考えから導入されています。EUでは勤務間インターバル制度はルール化されています(∵EC労働時間指令2003)。
 2019年現在、日本において勤務間インターバル制度を導入している会社は3.7%と十分ではありません。理想論に終わらぬようにするためには、それに伴う詳細もきちんと詰める必要もあるかもしれません。

 日本は制度化が遅れていますが、ご自身の自己管理のためにも勤務間インターバルが適正かどうか考えながら、見直して頂いてはいかがでしょう。

1311.「1729」

2024.09.11

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 今は心療内科医、精神科医として微力ながらも地域医療への貢献に尽くしていますが、若い内は数学者になれたらと憧れていました。まあ、なろうとしなくて良かったなとは思いますが。

 数学の世界には、オイラー、ガウス、リーマン、アーベルととんでもない天才がきら星のようにいますが、その人となりも含めて天才中の天才といえるのはインド人のラマヌジャンではないでしょうか。
 夢を見ていたら正十七角形の作図法が思いついたなんていうガウスもたいがいな人ですが、ラマヌジャンはインドの神様~ナーマギリ女神というらしい~が公式を授けてくれるんだそうで、業績の1/3は、自分で発見したけれども既存のもの(既存の知識をオリジナルで発見していること自体が驚異的)、1/3は重要なもの、1/3は重要かどうかも含めて意味が分からないものなんだそうです。

 ラマヌジャンはあまりの天才ぶりを英国のハーディ教授に見いだされてロンドンに招かれるのですが、水が合わなかったのか短命に終わってしまいます。病床のラマヌジャンをハーディが見舞うのですが、いつも来ていると話題に事欠いてしまったらしく、その日ハーディは面白い話題を思いつきませんでした。たまたま、来る前に見たナンバープレートが1729だったので、ラマヌジャンにこう話しました。

 ねえ、今日見たナンバーが1729っていうとてもつまらない数だったよ、と。

 ラマヌジャンは即座に反応して、「とても面白い数ですよ。1729は3乗の2つの和として2通りにあらわされる一番小さい数字です。」といったのだそうです。

 1729=1の3乗+12の3乗=9の3乗+10の3乗

 これはナンバープレートをもじって、数学マニアの間ではタクシー問題と呼ばれています。

 まあ、数学者になるとこういう人に度肝を抜かれて自分の才能のなさを恥じなければならなさそうで、今は、趣味程度でこういうことが楽しめる方が良かったのかなと思っています。

1310.Tentar non nuoce.

2024.09.10

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 イタリア語の諺より。やってみても損はないと訳されていますが、諦める前にやるだけやってみろ、という意味のようです。

 病気や怪我、加齢などがあると、色々出来ないことが増えてきます。私は膝を故障しているので自転車に乗れなくなりました。乗れないので自転車を廃車にして、徒歩か公共交通機関、私的に移動する場合は自家用車にしています。バドミントンをしただけで膝が腫れてしまったので、ちょっと踏ん張る運動はもう無理かなと悲しい気持ちになりました。

 どうしても諦めなければいけないことや、健全な諦めこそが心身を健康にすることはもちろん良くあります。

 ただ、最初から諦めてしまって何もしないと知識も、人格も成長しない恐れがあることでしょう。

 どうせ外国へ行かないから外国語をやってもしょうがないというのは一つの理屈かもしれません。しかし、私もこの先一度もフランスに行かないかもしれないながら、今年からフランス語を始めて見て、脳が活性化して爽快な感じがしています。頭が悪くないはずなのに、引きこもったり酒を飲んでしまったりする人もいますが、何もしていないのであれば、あるいは、色々諦めているからこそ、その前に何か勉強するなり、出来ることがあればやってみる、というのもありかもしれないと思っています。

1309.再発の維持療法は2年

2024.09.09

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 当院ではうつの治療は国際的なうつ病治療のガイドラインCANMATに則って治療を行っています。

 良くなった後も1年間はSSRI等を維持して内服する方が、5年以内の再発率を軽減させると知られています。ですので、良くなった後にサボらず、油断せず維持療法を行うことが重要です。

 当院では開業4年目に入りましたが、1年間の維持療法を完遂した人の再発は今のところありません。

 最初の頃、診断書を書いてもらってそれで安心してしまったり、薬に偏見があったり、自分の判断でもう良いだろうと思ってしまったり、個別の深い事情があったりして中断してしまった方も、最近再度来られる方がおられます。もちろん、治療をしないよりした方が望ましいため、中断再開例もウェルカムで拝見はしています。ただ、そういう方の久しぶり初診は、「ちゃんと内服していればそろそろ卒業だったはず」の時期に0から仕切り直しなんて勿体ないこともままあります。

 過去を悔やんでも始まらないので、そこから治療を行うわけですがCANMATによれば、再発者の維持療法は24ヶ月ほど必要になるようです。ですので、自分は大丈夫と思ったり、なんとか気合いで等と考えて治療を中断した方は結局、再発時の維持療法が2年となってしまい、時間もお金も、余分に掛かってしまうことになるのです。

 再発例は2年維持療法を行うことになると思いますので、もし初診で来られたのであれば、出来るだけ1年は通院・内服をして頂ければご自身のためにもロスが少ないのではないかと考えています。

1308.心療内科だからこそ内分泌疾患に注意

2024.09.08

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 当院では、出来る限り初診時の採血をお勧めしています。
 心療内科、精神科でも採血があるの?なんてことを聞かれることがありますがもちろんあります。

 精神科でも例えば、双極性障害の治療薬である炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなどは血中濃度の定期測定が推奨されています。特にリチウムは過剰になると、腎障害等色々な遺贈障害を起こすため、内服を始めたら、3~4ヶ月連続して濃度測定を行います。バルプロ酸でも肝機能障害や汎血球減少を起こしやすいため、採血は必須になります。

 それだけではなく、初回の採血には、お酒を飲まれていればアルコール性肝障害がないかをチェックする意味もあります。また抗精神病薬は糖尿病を起こすリスクが高いため、血糖値等の測定も重要です。

 よく、健康診断を受けてきた、と主張される方もおられますが、健康診断ではだいたい、甲状腺や副腎皮質機能について測定されることはありません。鬱なんじゃないか、という風に言われても、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症が見つかることもあります。
 初回の当院の採血で、家族性副腎皮質低下症を発見し、大学病院に依頼したケースもありましたし、下垂体に腫れが見つかったケースもあります。甲状腺機能低下症も割と多くて、近所の専門医を紹介させて頂いています。

 逆に他院であまり採血もなく漫然とお薬が出される場合もあるのですが、調べてみたら内科疾患だった、という落ちがたまにあります。見落としを防ぐためにも、採血を行う意義は高く、福岡徳洲会の副院長だった松林先生は、内分泌学の専門医として、この重要性を学会で何度も発表されており、私もそれを拝聴しては、きちんと検査を行って見落としを防ぐよう努力しています。

 どうぞご理解賜りますようよろしくお願いいたします。

1307.頼まれ仕事はすぐやろう

2024.09.07

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 知り合いのところで、若い子に仕事を頼んでもすぐにやってくれないんだ、何て悩みを聞いたことがあります。
 今は忙しい、すぐは出来ない、等と言いつつ、本来やることも案外進んでいなかったりして。

 仕事が出来ない人、やる気が不十分な人は後回しにしてギリギリにやるなんてパターンは良くあります。

 出来る営業マンなどは、嫌な仕事、頼まれ仕事ほど、できるだけすぐに取りかかるようにして、相手方の信頼を得たりしているようです。

 シチュエーションの違いや、量の限度などの問題、依頼のルールが正当かなど色々な問題があるとは思いますが、それらのディティールに大きな問題がないのであれば、頼まれた仕事ほど、快く引き受けて、早く取りかかり、サッと報告すると、依頼者の信用も獲得出来るのではないかと思います。

1306.どげんかしようとせん

2024.09.06

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 うつや適応障害でもがき苦しむ方々は、その苦境をなんとか乗り越えようと、疲れた体に鞭打ってはおられないでしょうか。

 非常に臨床能力の高い先生に、躁鬱病の治療の研修をして頂いたことがあります。
 その先生曰く、何とかしようという人には、何とかしようとすることを、一旦止めて頂くのが精神療法だというのです。

 その先生は患者さんに、
「どげんかしようとせんことですなぁ」
 としょっちゅう仰っていたそうです。

 どげんかしようとすることを、一旦棚上げして、休み、たっぷり寝てみましょう。

 不思議なことに、溺れている子どもが諦めて力を抜いた時と同じように、もがくのを止めた時にふと、楽に浮かんできたりします。

 どうにかしよう、どうにかしよう、と苦しんでおられる方、一度、骨休めをして、どげんかしようとすることを、一旦お休み頂いてはいかがでしょう。
 自分一人でなかなかそこまで出来ないと仰る方は、一度ご相談頂いてはいかがでしょう。

1305.人類は保育をする

2024.09.05

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 人間の赤ちゃんはなぜ泣くのか、という問いがあります。

 同様な類人猿の、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの赤ちゃんが、誰かを呼ぶべくワンワンと泣く様は見たことも聞いたこともありません。一体なぜなのでしょう。

 ジャングルで小猿がワンワン泣いたら、捕食の肉食動物に食べてくれと言わんばかりで、とても危険です。我々人類は、古来、ジャングルにゴリラなどから追われた、謂わば、ジャングルの敗残者と言えましょう。豊かな木の実を食べられないので直立二足歩行で餌を探している内に、直立の原理で脳が大きくなり、色々工夫が出来たようです。

 人間は外敵の入れない家を作るようになり、家の中で赤ちゃんを哺育することにしました。外敵がいないので赤ちゃんは親や大人を呼ぶことが出来ます。
 また、泣く行為は必ずしも親を呼んでいるわけではなく、世話をしてくれるなら誰でも良いということになります。ミルクを与えられるなら父親でも良いし保育士さんでも良いわけです。

 オランウータンの授乳期間が7年もあることは以前も触れましたが、人類はせいぜい1~2年。7年って、年長児や小1の子どもがおっぱいを求めてぶら下がっていたら人間の女性は狂ってしまうかもしれません。非常に未熟な状態で子宮から外に産み落とし、授乳期間も短縮し、他の大人を含めて社会で子どもを見ることにしたことで、人類は次の子どもを繁殖する能力も得ました。

 保育園に預けるのも、保育士に任せるのも、近代化してそういう職業が現れたとは言え、進化の過程で猿人、原人、旧人、新人となる間に、みんなで子どもを保育していくようにしたのが人類の種族としての決断であり特性です。

 子どもを預けることに少し後ろめたさのある親御さんは、ぜひ、気にせず堂々と預けてみて下さい。そして、会える時間にお子さんをたっぷり愛して上げましょう。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分