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672.神田橋処方

2022.12.08

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 当院には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の方も良くいらっしゃいます。
 PTSDにはフラッシュバックと言って、辛いシーンがあたかもリアルに再生しているかのように感じる想起です。トラウマ場面が再想起されてしまうため、当事者さんご自身はとても辛くなります。

 鹿児島に日本でも指折りの精神科医、神田橋條治先生というご高名な先生がおられます。2007年の臨床精神医学に掲載されてあちこちでも処方されるようになっている処方に、「神田橋処方」というものがあります。
 桂枝加芍薬湯と四物湯を合わせた処方です。

 最初は半信半疑で使ってみたのですが、かなり多くの方にてきめんに効果があることが分かってきました。
 抗うつ薬と併用することもありますが、どうしてもSSRI等を飲みたくなくて漢方で、と仰せの方にはこれを用いることがあります。早い人は数日でフラッシュバックが半減することもあります。

 四物湯は地黄(ジオウ)が含まれていますので、体質によっては下痢をしやすかったり便が緩くなることがあり、その場合は四物湯をスキップしたり、一旦休薬します。下痢に気をつけて用いれば、多くの方で外傷体験が軽減するため、かなり手応えを感じています。ただ、この記事を書いたからと言って漢方のみで治療したいというご希望が的を射ているかと言えばそうではないとも思っています。
 市中の開業医ですので、西洋薬を飲みたくない、と言う気持ちには一旦寄り添って処方もしますが、重度の鬱の場合は抗うつ薬をお勧めさせて頂く場合もあります。それでもためらわれる場合は、納得されるまでは、漢方のみでお付き合いすることもありますが、心理検査などの結果によっては再度抗うつ薬等をお勧めする場合もあります。

 いずれにしても、この神田橋処方は良く出来た処方という手応えがあります。

 PTSDの方にはボディートークや動作法なども有効で適宜使っていますが、処方薬としてはいたずらにベンゾジアゼピン系抗不安薬を増量するよりもこの神田橋処方が活躍することが多く、症状を伺いながら、適宜調整して用いております。
 自分にも該当するのでは、と思われた方は一度ご相談頂ければと思います。
 

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分