1318.風の電話
2024.09.18
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
岩手県の大槌町には亡くなった方と話せると言い伝えられる、風の電話というものがあるそうな。盛岡から100キロほど離れていました。私はこの存在を知らなかったのですが、学会参加の際に友人が行くと言っていたので同道させて頂きました。
仏教原理主義者だった父なら、そんなものは迷信だとでも言いそうなものですが。こういうのは、迷信かどうかと言うよりはそれをメディアとした一つの喪の作業です。
100キロの道を気心の知れた友人と語らいながらドライブすることもそう。
行ってみたら、線のつながっていない黒電話が設置してありました。まあそんなものではあるのですが、一応交代で電話ボックスに入って、律儀に掛からない電話に亡き友の電話番号をダイヤルで回しました。
ノートには日本語や英語で沢山の思いを綴っている人がいました。人に読まれるのが恥ずかしかったのでイタリア語で3行だけ書きました。
何で勝手に早く死ぬのか。
その後大変だったんだよ。
先生のいない学会はつまらないよ。
でも頑張るから見守っていて。
と言うような文句を言ってきました。もちろん返事はありません。
宮古や大槌町の辺りは、お家が新しかったです。これは、手放しで新しいと言えるものではなく、おそらく水害などで建て替えざるを得なかったのではないかと思うと切なくなりますし、浪板駅にはここまで津波が来たという信じられない高さを示す石碑がありました。
風の電話はその奥にあります。
彼が亡くなって半年。また一つ喪の作業が進みました。