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1259.感覚過敏

2024.07.21

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 発達障害の人には感覚過敏がある場合があります。
 匂いや触覚に過敏な場合があります。

 ハンドルは握れるけれどもハンドルカバーがついたら違和感がありすぎてそのハンドルが握れないとか。手袋をすると上手く触れないとか。そういうこともあるようです。
 高度に知的な方だと、コミュニケーションは上手に取れたり、人間関係も良好だけれども、発達特性は強めという人もおられます。

 最近は、若い方にも発達障害という言葉が浸透してきている一方、変わっていて面倒くさい相手に、「発達障害ではないか」とレッテルを貼って、諦めたり辛抱する理由にしたりする場合もあるようです。

 いずれの場合も、専門家がきちんと評価した上で、生産的な対処法や周囲に配慮があるのであれば具体的で実現可能な合理的配慮を求めるなどを行っていくことになります。

 感覚過敏などで、自分がそうかも、と思われた方は、一度ご相談頂ければと思います。

1258.前進ばかりが治療ではない

2024.07.20

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 なかなか良くならないと、もどかしく感じますよね。
 私自身もせっかちな性格をしていますから、早くよくなれ、とさるかに合戦のカニの子のように普段から念じているわけですが。

 しかし、よく考えてみれば、悪化していないとか、怒りだしていないとか、以前取っていた不適切な行動が減ったり緩和されていることだってあるかもしれません。飲酒量に気をつけるようになったとか。悪化させない、平穏な生活をキープできる、というのも大事な治療になりますし、平穏な生活が送れていなかったのであれば、十分な前進と捉えて良いと思います。

 ブリーフサイコセラピーで有名な、ある先生が、授業の際、微動だにしない教卓を指して、「すごい勢いで動いてますよね?原子が」なんて仰ったとか。静止しているように見えても、原子にせよ、我々にせよものすごい速度で動いていたりします。地球の公転速度は時速で言えば10万7000kmほどですし、赤道上の自転速度は1700km/hになるそうです。

 まあ、そういう物理的な豆知識はさておき、見方によっては良く動いているということはあり得るわけですから、一見停滞しているように見えても、維持しながら生活していること自体が前向きに捉えられるのではないかと思います。

1257.エントロピー

2024.07.19

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 エントロピーとは、Wikiによりますと、熱力学や統計力学において定義される示量性の状態量とされます。熱力学では断熱条件下の不可逆性を表し、統計力学においては、系の微視的な「乱雑さ」を表す物理量という意味付けがなされました。
 統計力学での結果から、系から得られる情報に関係があることが指摘され、情報理論にも応用されるようになったと言います。
 要は散らかっている、的な感じで、片付けられていないお部屋を指して、「エントロピーが増大している」などと言います。

 片付けはエントロピーを下げることですが、エントロピーは放っておけば増大する傾向にあるため、エントロピーを下げるためにはそれなりにエネルギーを投入する必要が発生します。

 つまり、片付けに使う熱量を合計するならば、整頓が出来たとしてもその部屋に投入されたエントロピー量は上がるとも言えます。

 どうしてもエントロピーは増えてしまうため、普段はなるべくエントロピーが増大しないように気を配り、散らかってしまった時は労力を掛ける心構えで挑むことになります。

 片付かない時、少しエントロピーという概念を念頭に置いても良いかもしれません。

1256.成績と睡眠

2024.07.18

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 十分な睡眠時間は、学業成績にも必要不可欠なことが知られています。
 Gruberら(1)は、睡眠時間と学業成績には正の相関(多ければ、結果が良いということ)があることを報告しています。また、Wangら(2)は、睡眠時間が8時間を下回ると、成績が低下すると警鐘を鳴らしています。Curcioら(3)は、学業成績や認知能力は不十分な睡眠で下がり、十分な睡眠で改善すると指摘しています。

 私も従来睡眠を軽視しがちな生活を送っておりまして、反省しないといけません。

 結局、短時間睡眠であれば、勤務医時代は会議やカンファレンスで寝てしまうということが起こり得ていました。
 受動的に人の話を聞くことは眠くなることにつながりやすいですが、睡眠時間がたっぷり取れていれば、つまらないところは流して重要なところを記憶するなど取捨選択などの認知能力も上がっていた気がします。

 温かい布団でぐっすり寝る、こんな幸せなことはない、というのはドラえもんののび太君の名言だったような気がしますが、戦乱のない日本に生まれ育ち、温かい布団で命の危険なく眠れるのであれば、その幸せを最大に享受した方が良いですし、睡眠は勿体ない時間の使い方ではなく、幸せの時間だから増えて良い、と認識して頂ければ、頭の切れも戻ってきてより健康になるのではないかと思います。

(1)Gruber R, Laviolette R, Deluca P, Monson E, Cornish K, Carrier J. Short sleep duration is associated with poor performance on IQ measures in healthy school-age children. Sleep Med. 2010 Mar;11(3):289-94

(2)Wang G, Ren F, Liu Z, Xu G, Jiang F, Skora E, et al. Sleep patterns and academic performance during preparation for college entrance exam in Chinese adolescents. J Sch Health. 2016;86:298‒306

(3)Curcio G, Ferrara M, De Gennaro L. Sleep loss, learning capacity and academic performance. Sleep Med Rev. 2006 Oct;10(5):323-37.

1254.コアは一つ

2024.07.17

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 本質的に物事を理解したい時に、色々、組織の事情や背景が絡んできて、現実の汚泥に汚されていくと、なかなか物事の本質が見えない時があります。
 例えば、宗教であれば、本質的には、神仏の前で魂は平等なはずです。
 しかし、在家と出家の差違はあり得ますし、組織になってくると、僧侶や神職にも位階が発生することもあるようです。

 より深く協議を理解し実践している人と、まだそうでない人には学力同様、知識や経験に差があるのでしょうけれども、それが位の上下として認識されるようになると上下の区別なり差別が生じてきたり、その際は結局献金額だったりと、なかなか汚いように見えてしまうこともあるかもしれません。

 しかし、人が集まり何かを運用するとどうしても組織は出来てしまうし、そこの命令系統に上下が発生するのも仕方がないことなのかもしれません。

 私の実家でも、事務総長だったか偉い人になった先祖がいたようですが、その後は、説法するのに最低限必要な位までしか取らなかったようです。本質的には神仏の前では平等という考えだったのではないかと思います。衆生済度なり、軸になる考え、一つのコアを重要視すれば、些末な都合は吹き飛んでいくことがあります。

 最も重要なコアを一つ理解しておけば、色んな迷いから霧が晴れることがあります。

1253.母親の帰宅時刻

2024.07.16

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 お母さんの帰宅時刻が遅い家庭では、子供の就寝時刻が22時以降になることが多いようです(1)。厚生労働省の21世紀出世児縦断調査というものがあります。この調査によりますと、2001年に出生した4万人以上の子どもの睡眠習慣の追跡調査が行われました。4歳6ヶ月時点での最も多い就寝時刻は21時台(50.1%)、次いで22時台(21.9%)であり、21時前に就寝する子供は5人に1人以下しかいませんでした。これは親が残業等で帰宅が遅いことも影響しています。
 塚田由佳里氏らの研究(2007:(2))によれば、就寝時刻が遅くなれば睡眠時間が短くなることも知られています。

 これは必ずしも母親の責任を問うわけでもなければ、子供の就寝時刻について母親だけが管理しなければならないという趣旨ではありません。一つのデータとしてそういう研究が知られているということです。
 母親の帰宅が遅い場合は、祖父母の手助けが活用できる場合はした方が良いでしょうし、父親の帰宅を早めたり家事への参画も重要でしょう。ただ、判っていてもなかなかそれらが困難な家庭もあるでしょうから、実際の家庭内でこれらをどのように改善するかは夫婦間の話し合いも必要でしょうし、それらが困難な場合は片親のケースも含めて、社会福祉などの活用がどの程度提供できるのかなどを検討していく必要があるでしょう。

 もし、改善可能でなんとなく遅いだけだったという場合であれば、帰宅時刻を少しでも早めて頂くことが重要になるでしょう。

(1)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-007.html
(2)塚⽥ 由佳⾥, ⼩伊藤 亜希⼦, 親⼦の帰宅時間の遅延化と親の⽣活スタイルが⼦どもの放課後の⽣活に与える影響
⽇本家政学会誌, 2007, 58 巻, 5 号, p. 231-246

1252.ささやかな贈り物

2024.07.15

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 師匠の一人、広島の魔法使いこと松原秀樹先生は、自律訓練学会の副理事長をお勤めになった偉大な心理学者でした。
 いつもにこにこ、怒ったところを見たことがない、恰幅の良いジェントルマンでした。

 彼の面白いところはたくさんありましたが、特徴の一つとして会う時必ず何かお土産をくれる人、というなんか子供が親戚のおじさんに期待するようなことを言ってしまっていますが、そういう所がありました。真似ではないのですが、学会や研修会に行く時にちょっと多めにお土産を持参して、会った人に差し上げたりしています。
 秀樹先生と比べると仁徳にかなり劣ってしまうので、効果がどれほどかは判りませんが、準備に疲弊した人や講師の方にちょこっとねぎらいの気持ちを表現すると、すごく場が和む感じがします。やっぱり甘いものの博多通りもんなどは効果的な印象です。

 相手に若干失礼な返しをされたり、雑な対応された時に、以前は気色ばんで同様に怒ることもあったのですが、まああちら様にも余裕がないのでしょう、ということで一旦大変さを労って差し上げてみようと、考え方を変えてみました。

 雑な対応をされたことは棚上げして、お疲れのようですから、と労うと、不思議なことに温かさには温かさが返ってくるものです。

 やはり私が接することで皆が温かい気持ちになれるような、秀樹先生のような存在になりたい、と思っています。なれるかは判りませんが、目指すのは自由ですし、道半ばであろうとも、その方向に歩むことは大切なことだと思うので。

 皆さんはご自分の温かさをどうやってお伝えしていますか。

1251.写真

2024.07.14

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 関西に出張があったので、三重大学時代の親友達と食事に行きました。
 それぞれ自分の道を見つけて頑張っている友人達のお話を聞かせて頂いたり、保険点数やら運用の実際と言った医師同士ならではの突っ込んだ話題であったり、お互いの家族のことなどざっくばらんに話していました。
 3月に恩師が亡くなってから、こういう機会がとても愛おしい一期一会だと思うようになりました。
 食事会に行くと料理の写真を残す習慣があったのですが、最近は給仕の方にお願いして、その場の写真を残してもらったりするようにしています。
 また会えると思っていたら、それが最期ということはあり得ます。

 その内の友人の息子さんがメンタルヘルスに興味があるというので、以前、例の先生の研修会にお誘いし、実際にマエストロとその方が写真に収まったことがありますが、まさに一期一会で、その研修会だけが唯一の出会いの機会であり、非常に良かった、というような感想を頂いたこともあり、お誘いして良かったとも思います。

 食事会の写真に、友人や弟子達と写真を残すことにした、というただそれだけのことなのですが、お目にかかれる機会を常々愛おしい気持ちで接していこうと思うようになりました。
 
 皆さんは、次回お目にかかる人達との一期一会をどのように過ごされますか。

1250.徳田虎雄氏

2024.07.13

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 医師として最初にどこでスタートを切るか、という時に、私は茅ヶ崎徳洲会総合病院を選びました。
 その理由にはいくつかあるのですが、曾祖父の避暑地が茅ヶ崎にあったらしいなんてゆかりもあれば、徳洲会の中でも非常に特筆すべき修行になる病院と言うこともあります。
 
 一代で徳洲会を築き上げた功績、その後、色んなことがあったようですが、彼の功罪については既存の記事が書いているでしょうから、そちらにお譲りすることにします。偉大な人であったことは確かですし、研修医の時代に至近距離で動機と徳田氏とで集合写真に収まったことがあります。心療内科を志していたため、研修終了後は疎遠になってしまいましたが、非常に教育熱心で教育カンファレンスが多く、とても勉強になる病院だったことは間違いありません。

 長らくALSを煩っておられたと聞いています。

 徳田先生の死で、一つの時代が終わったのかなとも思います。

 私は私なりに、全ての人に手を差し伸べるべく、徳田イズムを私なりに咀嚼しながら、六本松地域の医療に貢献できればと思っております。徳田先生お疲れ様でした。合掌。

1249.ゆっくり始まる学校

2024.07.12

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 電気の普及により、夜も明るく読書やTVを楽しめるようになった分、就床時刻が遅くなったことは否めません。
 江戸時代以前などは行燈の油も油代がかかるなんて言うので夜はさっさと寝る、早起きする、などが推奨されていたと思われます。

 とはいえ、現代人に9時に寝なさいというのも、病院ですか、って感じで無理があるのも尤もなご意見です。

 そこで、じゃあ、学校のスタート遅らせればいいんじゃね?って思ったことはあるかもしれませんが、実際には、個人が遅刻したり午後から登校しているのが日本の実情だと思います。
 これを思い切って本当に遅らせた学校があるようで、カリフォルニア州では、2019年に法整備が行われ、10時始業という学校を試みたところもあるようです。
 その結果、13~16歳の生徒においては、病欠が減少して学業成績も上昇したと言います。

 フリースクールなどではこういったことも取り入れられているのかもしれませんが、データが発表されている以上、日本の公立でも試みても良いのではないかと思われます。
 実際に教師等職員の負担が大変になるのか、どうなのか、という、教職員や事務職員が快く働けるかという観点も必要かもしれませんが、子供達にとって有益であれば、一考の余地があるのではないかと思っています。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分