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1295.プラスティネーション

2024.08.26

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 私は医学部卒なので3年生の時に、献体頂いたご遺体を、同級生と解剖実習をさせて頂いた経験があります。
 以前働いていた病院でも、身寄りのない精神病の方も、健康な判断力のある方が生前に、死後は大学病院に献体したい、と希望されたことがあり、そういった場合はそういうことを取り仕切る団体があり、そこに生前に登録をしておくと、病死された後に、献体として保管されるようになっているようです。そういう動きがあってご遺体が集められているのを医師になってから具体的に知った気がします。

 献体される場合は、逆に、火葬などは、解剖実習等を終えた後の処理として大学等が責任を持って行うことになるため、特に経済的に葬儀の費用にも困る方にはある意味、しかるべきところが適切に処理してくれる上に、学問にも寄与できるというシステムになっており、死後のご自分のご遺体に特段のこだわりがない人には有用な制度かもしれません。

 プラスティネーションというのはご遺体から水分・脂肪分・油分を抜いて、固定する方法で、ドイツ・ハイデルベルク大学のグンター・フォン・ハーゲンスにより、1978年に生み出されました。ハーゲンスは特許を取得し、プラスティネーション協会を取り仕切っているようです。親の出自は本人とは関係ないとは言え、ハーゲンスの親はナチスに傾倒して、警察に所属してユダヤ人の移送やユルゲン・シュトロープ指揮下ワルシャワ・ゲットー蜂起鎮圧戦に参加していたと言います。

 日本でも1990年代に人体の不思議展という展示が行われたのですが、紆余曲折があり、その後はハーゲンスとは別の団体との契約で展示が継続されました。Wikiによればその後プラスティネーションを模倣した中国の団体が後を引き継いで展示はある程度行われたようですが、プラスティネーションは非常に高価であることや、また、ご遺体の生前の善意の意思表明が不明瞭という問題を指摘する声が上がったようです。というのも、死亡後かなり素早く固定する必要があるようで、日本のようにご遺体の尊厳を法制化した死体解剖保存法などがあると、大学の解剖や法医の教官でもない限り、そんなに簡単に保存や加工は出来ませんし、自然死をした日本のご遺体が、「素早く」大学の解剖学教官のもとに到着する可能性はかなり珍しいと思われるからです。

 特に、ご遺体は中国で拷問死した人達ではないのか、という疑念は晴れたとは言えないようです。

 京都府保険医協会の告発により、その後、現在までこの類の展示はありません。

 細胞や組織を、そのままの状態で固定する技術や、固定したことにより様々なスライスを知ることが出来ることは学術的な興味を満たす意味はあるのだと思います。ただ、最近書いているような、物事の「オープン性」に欠けるものであれば、やはりご遺体の尊厳に対して後ろ暗い扱い方をしたのではないか、という疑念が生じてしまいますし、高額の標本を用いて、「金儲け」をしていると批判に、何らかの回答を与える必要もあるでしょう。

 コンプライアンスがだんだん厳しくなってきている現在の世の中で、様々ななされるべき配慮が検証されていけば良いのかなと思います。また、プラスティネーションも十分な量が出来ていれば~展示をしたわけですから十分量はあるはず~で今度はそれをコンピューターCG化するなどにより、今後はそういったきわどいことをしなくても、学びにつなげることは出来ていくでしょうから、そろそろ、こういったことは厳しく検証され、下火になっていくのかもしれません。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分