1243.ナッジ
2024.07.05
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
行動経済学では、対象者がその行動を取るように、促すことを、そっと肘で押す、といった意味でナッジと言っているのだそうです。
前項では、できるだけポジティブな言い回しを、と言いましたが、この辺は実際に調査してみると違うこともあるようです。
ある検診キットは今年受検しないと来年はキットを送付できないという決まりがあったそうです。
そこで、
「今年受検されないと来年度はキットをお送りすることが出来ません」
という警告を書いたものと、
「今年受検された方には来年もキットをお送りします」
とポジティブに書いたものをランダムに半々ずつ送付してみたそうです。
さて、どちらの方が受検率が高かったと思われましたか?
なんと今回は、警告の方が受検率が高かったんだそうです。今年行かないと来年はキットが送ってもらえない、という損を明確化した方が、損したくない気持ちをあおって受検率が上がったと言います。
ただし、こういうネガティブ系の言い方は複数回使うことは難しいらしく、何度もやるとみる側も慣れてしまって効果がないらしいと言うことも知られているのだそうです。
このように、受検行動を後押しする文言をナッジと言うらしく、彼らのすごいところは、ある程度候補を絞って実際に散布してみて、回収して検証する所までやっているんだそうです。疑問が沸いたら、検証する、それはとても有意義な研究になるわけですが、ナッジを2つにまで絞り込み、送付、回収して結果を集計するというのはいうは簡単でも結構な手間が掛かっていると思われます。
そういう意味では、よくトイレで見かける「きれいに使って頂きありがとうございます」というナッジも、嫌味広告なんて言われたりしますが、本当に効果的なナッジになっているのか行動経済学の先生に検証してもらいたいものです。
皆さんも、家族の友人の行動を改めてもらいたい時、ついつい口うるさく言ってしまうこともあるかもしれませんが、効果的なナッジになっているのか、今一度振り返ってみるのも有益かもしれません。