1061.反転
2024.01.09
ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。
境界型人格障害とか、ボーダーラインパーソナリティとかいわれている病気があります。
情緒が不安定で、アイデンティティも揺らぎやすく、空虚感に苛まれたり、半端ない怒り方をしたり、なかなか大変な状態の方が多いです。
その中に理想化とこきおろし、というのがあります。
以前、診察した方に、理想の医師に出会えた的なことを言われた瞬間、これは数ヶ月後に、何か気に入らないとすごく悪口を言われるに違いないと察しました。私は真摯に頑張って診療はしますが理想的な人間でも理想的な医師でもありません。等身大に誠実にやるしか方法はありません。
そういう方は、理想化の後に、最初と違ったとか思ったのと違うとか言って後ろ足で砂を掛けるように去って行きます。治療者側は一生懸命関わったんだけどな、と寂しい思いをすることがあります。看護師や心理士にもそういうことにはなりがちなので、誠実に一生懸命やって良いけれど、自分がこんなに一生懸命関わったのに、という風には思わないようにと伝えています。気持ちや関係性が掌を返すように反転する訳です。
それでもとにかく治したいと、お出でになる方は、労力を惜しまずにお目にかかっていますが、後ろ足で砂を掛けて去って行く方に関しては、あまりこちらも落胆しすぎぬようにして切り替えるように努めています。反省点は反省するにしても、やり取りを振り返ろうにも話し合いに来てもらえないことにはどうしようもありませんから、あまりしけた顔で次の患者さんにお目に掛かるのも失礼でしょうから、次の人に誠実にお目にかかろうと切り替えて、またコツコツと診療に向かいます。