ブログ

1250.徳田虎雄氏

2024.07.13

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 医師として最初にどこでスタートを切るか、という時に、私は茅ヶ崎徳洲会総合病院を選びました。
 その理由にはいくつかあるのですが、曾祖父の避暑地が茅ヶ崎にあったらしいなんてゆかりもあれば、徳洲会の中でも非常に特筆すべき修行になる病院と言うこともあります。
 
 一代で徳洲会を築き上げた功績、その後、色んなことがあったようですが、彼の功罪については既存の記事が書いているでしょうから、そちらにお譲りすることにします。偉大な人であったことは確かですし、研修医の時代に至近距離で動機と徳田氏とで集合写真に収まったことがあります。心療内科を志していたため、研修終了後は疎遠になってしまいましたが、非常に教育熱心で教育カンファレンスが多く、とても勉強になる病院だったことは間違いありません。

 長らくALSを煩っておられたと聞いています。

 徳田先生の死で、一つの時代が終わったのかなとも思います。

 私は私なりに、全ての人に手を差し伸べるべく、徳田イズムを私なりに咀嚼しながら、六本松地域の医療に貢献できればと思っております。徳田先生お疲れ様でした。合掌。

1249.ゆっくり始まる学校

2024.07.12

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 電気の普及により、夜も明るく読書やTVを楽しめるようになった分、就床時刻が遅くなったことは否めません。
 江戸時代以前などは行燈の油も油代がかかるなんて言うので夜はさっさと寝る、早起きする、などが推奨されていたと思われます。

 とはいえ、現代人に9時に寝なさいというのも、病院ですか、って感じで無理があるのも尤もなご意見です。

 そこで、じゃあ、学校のスタート遅らせればいいんじゃね?って思ったことはあるかもしれませんが、実際には、個人が遅刻したり午後から登校しているのが日本の実情だと思います。
 これを思い切って本当に遅らせた学校があるようで、カリフォルニア州では、2019年に法整備が行われ、10時始業という学校を試みたところもあるようです。
 その結果、13~16歳の生徒においては、病欠が減少して学業成績も上昇したと言います。

 フリースクールなどではこういったことも取り入れられているのかもしれませんが、データが発表されている以上、日本の公立でも試みても良いのではないかと思われます。
 実際に教師等職員の負担が大変になるのか、どうなのか、という、教職員や事務職員が快く働けるかという観点も必要かもしれませんが、子供達にとって有益であれば、一考の余地があるのではないかと思っています。

1248.四当五落?

2024.07.11

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 現在は睡眠の科学も発展して来ていますから、教師や予備校講師なども睡眠を推奨してくれると思うのですが、私どもの若い頃には四当五落なんていう危ない言葉がありました。
 受験生の睡眠時間が4時間であれば当選(受かる)が、5時間寝たら落ちる、なんていうスローガンな訳です。

 それだけ厳しい努力が必要なんだぞ、という「比喩表現」としてはありなのかもしれませんが、実際に4時間睡眠で、長丁場の受験勉強を乗り切ることは難しいのではないかと思いますし、現在は医学的にも全く正当性がないことが知られています。
 Gruberらの論文(1)によりますと、睡眠時間の長さと学業成績には正の相関があると言います。

 知り合いの息子さんがお父さんより良く寝る、なんて聞いたことがありますが、良く寝る息子さんの方が良い大学に行ったと言いますから、やっぱり本当なのかなとも思います。

 また、Wangら(2)は睡眠時間が8時間未満になると成績が低下すると言っているようです。

 四落五当なのか四落八当なのか、判りませんが、しっかり寝るためのタイムマネジメントこそ推奨されることになるようです。

 無理をしても集中力低下や眠気が出ますから、カフェインや気合いで乗り切るにも無理があります。

 無理なくしっかり寝ることが、良い頭脳活動を生むと考えています。

1247.こどもの推奨睡眠時間

2024.07.10

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 日本の子供達の睡眠時間は足りていないのではないかと言われています。
 実際の所はどうなのでしょう。

American Academy of Sleep Medicineが提案している睡眠時間(1)は
4~12ヶ月で12~16時間
1~2歳で11~14時間
3~5歳で10~13時間
6~12歳で8.5~12時間
13~18歳で7.2~10時間弱と名手います。

 それらも踏まえて日本の「健康作りのための睡眠ガイド2023」(2)においては

1~2歳児:11~14時間
3~5歳児:10~13時間
小学生 :9~12時間
中高生 :8~10時間
となっているようです。

 それに対して、小児保健協会による調査では
1歳9.6時間
3歳9.8時間

 医師の研究グループによる調査では、
小学1~4年生:8.7~9.2時間、
小学5~6年生:8.3~8.5時間、
中学生   :7.2~7.6時間と報告され、上記の日米の推奨時間より短めになっていることが報告されています。

 夜型になっているが起床時刻が変わるわけではないため睡眠時間が短くならざるを得ないこと、睡眠を軽視する文化があることなどが背景にあるようです。

 睡眠は成長のためにもメンタルヘルスのためにもしっかり取った方が望ましいため、お子さんをお持ちの方は上記のデータもご参考にして頂いて、早寝が出来るようお取りはからい頂いてはいかがでしょう。

(1)J.Clin Sleep Med.2016;12(11):1549-1561
(2)健康作りのための睡眠ガイド2023

1246.権力者への忖度はメディアの死

2024.07.09

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 都知事選が終わりました。
 現職が元々有利とは言え、学歴詐称疑惑の解明、公約が本当に達成されたのかの監視、公開討論会に出てこないことの是非、公務と称して選挙運動まがいのことをしていることの正当性、戸別訪問をしているのではないかという疑念、などをメディアはきちんと検証したのでしょうか。
 ネットにものすごい勢いがあったにもかかわらず、2位以下の候補への焦点も敢えて避けていなかったでしょうか。

 特番と言えば池上無双なんて言葉がありましたが、切れのあるキャスターを煙たがって起用せず、悪意のある愚問を繰り返すコメンテーターやアナウンサーが起用されていました。命がけで国を憂う本物の国士の前に、愚問を問い直されて沈黙するキャスターやゲストの多かったこと。
 メディアは電波を預かっている責任を放棄していると思わざるを得ません。

 これは太平洋戦争直前の大政翼賛会のような状態に陥っていることは明白であり、メディアと権力は対立はしなくて良いですが、真実を明らかにして情報公開を求める、その責任を果たし、ほどよい緊張感を生んでいく必要があるのではないかと思います。

1245.薬指の長さ

2024.07.08

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 七夕の夜、織り姫と彦星は薬指に誓いを立てたかは、アジアの昔話なので定かではありませんが、川を挟んだ恋の中に、現代人であれば薬指を連想する人もいるかもしれません。

 ケンブリッジ大学の神経科学と経済学の研究者達は、成功している証券トレーダーとそうでない者達を比べて、薬指と人差し指の長さの比が大きいと言うことを明らかにしたと言います。(1)。
 そうなんだ、と思って私も自分の手をじっと見てみたところ、薬指は中指より少し短いくらいですが、逆に人差し指が短いのでいびつな手だなあと思っています。まあでも、このケンブリッジの研究に照らし合わせれば、薬指と人差し指の長さの比は大きいと言うことになりますから、悪くないのかもしれません。
 一般に、薬指と人差し指の長さの比は男性ホルモンであるところのテストステロンの量に比例しているようです。妊娠3ヶ月頃までのテストステロンの曝露量から指の長さの比が決まるんだそうです。テストステロン量がなぜ大事かと言えば、一瞬の判断力や筋肉の量に影響するからと言うことでした。

 そういうことから、他の研究においても、サッカー選手やラグビー選手でも一流とそれ以下の選手の研究で確かに差があるそうですし、オーケストラ奏者についても、地位が高い走者ほど薬指が相対的に長いんだそうです。行動経済学の大竹文雄先生はこれらの研究では全例調査でないため不十分と考え、大相撲でこの研究を確かめたところ、確かに、横綱大関の力士の方がそれ以下で引退した力士よりも平均的には薬指が人差し指より相対的に長く、統計的にも有意差があると明らかにしました。実際には個人差もあるので、あくまで平均同士の比較と言うことでご了承頂きたいのですが・・・。

 日本でも有数に優秀な人材、例えば大谷翔平選手、藤井聡太竜王名人、多資格YouTuberで塾長の河野玄斗さん、元安芸高田市長だった石丸伸二さんなどの動画を見る機会があれば今度薬指の長さに注目して見てみたいなと思いました。

 なお、この記事の元ネタは、大竹文雄著「競争と公平感」(中公新書)のコラムを拝見して、私感を加えてしたためたものです。良ければこちらも手に取ってみて頂ければと思います。

1244.若年者とスマホ

2024.07.06

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 学会では、思春期と睡眠の講演も聴いて参りました。こちらも非常に頭脳明晰な先生で、たくさんの論文を読み込んだ上でわかりやすく提示しており、一朝一夕の知識ではなく骨太に裏打ちされた普段からの勉強量の分厚さがある講演で非常に感心致しました。

 20代の若者の睡眠時間を削ってしまう要因は男女とも42%ほどがスマホ等のメディアをいじっている時間に侵食されているようです。年齢的な違いなのでしょうが70代だと1~2%ですから、世代間でスマホとの付き合い方が全然違っていることが見て取れます。もちろん、スマホだけが悪者ではないですし、親の仕事が遅いとか夕飯の時刻が遅めだとか、睡眠を軽視しがちな文化背景だとか色んな要因があるようですが、20代のスマホ時間と睡眠不足は傑出して悪い関係のようでした。

 かくいう私もスマホを弄っているのが長い方ですが、最近はできるだけ語学等の勉強アプリで遊ぶようにして、どうせ弄っているなら自分のためになることをという発想で最近は外国語の勉強をやっています。

 iPhone開発者のジョブズ氏は子供にそういったメディアを与えなかったと言います。

 スマホばかりが悪いわけではありませんが、睡眠時間を大切にするよう、普段から意識して頂ければ幸いです。

1243.ナッジ

2024.07.05

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 行動経済学では、対象者がその行動を取るように、促すことを、そっと肘で押す、といった意味でナッジと言っているのだそうです。

 前項では、できるだけポジティブな言い回しを、と言いましたが、この辺は実際に調査してみると違うこともあるようです。
 ある検診キットは今年受検しないと来年はキットを送付できないという決まりがあったそうです。

 そこで、

「今年受検されないと来年度はキットをお送りすることが出来ません」
という警告を書いたものと、

「今年受検された方には来年もキットをお送りします」
とポジティブに書いたものをランダムに半々ずつ送付してみたそうです。

 さて、どちらの方が受検率が高かったと思われましたか?

 なんと今回は、警告の方が受検率が高かったんだそうです。今年行かないと来年はキットが送ってもらえない、という損を明確化した方が、損したくない気持ちをあおって受検率が上がったと言います。

 ただし、こういうネガティブ系の言い方は複数回使うことは難しいらしく、何度もやるとみる側も慣れてしまって効果がないらしいと言うことも知られているのだそうです。

 このように、受検行動を後押しする文言をナッジと言うらしく、彼らのすごいところは、ある程度候補を絞って実際に散布してみて、回収して検証する所までやっているんだそうです。疑問が沸いたら、検証する、それはとても有意義な研究になるわけですが、ナッジを2つにまで絞り込み、送付、回収して結果を集計するというのはいうは簡単でも結構な手間が掛かっていると思われます。

 そういう意味では、よくトイレで見かける「きれいに使って頂きありがとうございます」というナッジも、嫌味広告なんて言われたりしますが、本当に効果的なナッジになっているのか行動経済学の先生に検証してもらいたいものです。

 皆さんも、家族の友人の行動を改めてもらいたい時、ついつい口うるさく言ってしまうこともあるかもしれませんが、効果的なナッジになっているのか、今一度振り返ってみるのも有益かもしれません。

1242.効果的な陳述方法

2024.07.04

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 心身医学総会では、行動経済学の先生の話もとても面白かったです。
 医学の世界ではインフォームドコンセントという概念があります、その、インフォームドコンセントには、「患者さんは知識がないだけなので、正しい知識を提供すれば正しい決断が出来るはず」、という前提があります。これは行動経済学の先生が言うのは驚くべきことに古典経済学と同じ考えだというのです。つまりは、古い考え方で今は正しくないと言うことです。
 それどころか、正しい知識を提供しても、情報過剰だったり、参照点のバイアスが掛かると、通常判断を誤り得るという前提の方がリーズナブルだというから驚くべきことです。

 例えば、手術の成功率は90%という事実があったとして、それをお伝えする時に、

「90%成功する手術ですが受けますか?」
と聞いても良いし
「10%は失敗する手術ですが受けますか?」

と聞いても、それは同じことのはずなのですが、なんと陳述の仕方が違うと前者と後者では、実際に受ける決断をするかは統計学的に差が出てしまうのだそうです。

 皆さんもなんとなくは予測されるとおり、90%成功、と記述して提供した方が患者さんは安全に手術を受け、手術を受けて回復するというメリットを享受できるというのです。

 提供する際の陳述の仕方には、結果に差があることがあるため、受けることを促したい場合はポジティブな印象になるような陳述方法が必要だと言うことです。私は催眠療法の専門であり、暗示の効果性という観点からも、できるだけポジティブな言い回しを普段から心がけることが大事と申し上げておりますが、全く別の学問、行動経済学の観点からもそれは根拠のある正しさであったと知り、大いに驚き、感心した次第です。

 著者の大竹文雄先生の本は何冊かアマゾンでポチりましたので、紐解いて読んでみたいと思います。皆様も、常々、脳内言語や独り言も、ポジティブな言い回し、心がけてご覧になりませんか。

1241.大谷選手は8時間以上眠る

2024.07.03

 ブログを読んで下さるみなさま、いつもありがとうございます。六本松地区で開業していますまつばら心療内科の松原慎と申します。

 よく知られた話ではありますが、ドジャーズで毎日のように大活躍しているメジャーリーガー、大谷翔平選手は、常に8時間以上は睡眠を取り、あわよくば10時間は寝ることにしていると言います。スーパースターの一挙手一投足が気になるのはファンの心理としても、わざわざ睡眠時間が話題になるというのは、多くの人が実際の所大谷選手ほど寝ていない人が殆ど、という事実の裏返しなのではないでしょうか。30~50代の働き盛りの人々の多くが6時間睡眠を切っていることも知られているようです。

 彼が何億円も稼いでいる上によく寝ている、というのは、憧れでもあると同時に、うらやましいようなそうありたいような願望もあるのでしょう。

 まあ、よく寝たら160km/hの剛速球が投げられるのかってそうはならないですが、それだけ酷使する体には十分な睡眠が必要不可欠なのでしょう。

 他方で、最近八冠から七冠に後退してしまった将棋の藤井聡太竜王名人も、基本的にはよく寝ることで知られています。彼の場合は、AI超えと言った深い読みの手を指す、謂わば頭脳労働者なのでしょうが、脳を酷使する人も良く寝るということなのでしょう。大谷翔平選手ほどではないかもしれませんが、藤井竜王名人の睡眠時間も記事になっていました。

 それらのことから我々は睡眠不足を反省して良く寝るように心がける必要があるのでしょう。メンタル不調のご相談の方には必ず良く睡眠をおとりになるようお伝えしております。心身の回復は、量も質も良い睡眠から。よく眠れていない方はご相談頂ければと思います。

地下鉄七隈線「六本松駅」徒歩5分