自律訓練法とは
自律訓練法とは、ドイツのシュルツ博士が考案した医学的リラクセーション方法です。
元々、催眠に入った人達の反応を統計的にどのようなものが多いかを検証した研究がありました。多くの被験者から沢山の反応を聴取して、手足が重たく感じたとか、手足がぽかぽか温かく感じた、おなかが温かく感じた、脈拍が落ち着いているように思う、呼吸が楽、頭がすっきりしている、など6つの身体的な反応をピックアップしました。これらの6つの代表的な反応を、「公式」として唱える自己催眠の方法と言えます。
宗教的な偏向や意図はなく、中立的で医学的な方法論です。
当院では、睡眠薬や抗不安薬を止めていきたい方に対し、自律訓練法の習得を推奨しております。院長は自律訓練法認定医です。
以下に自律訓練法について、軽く概要を記載いたします。
自律訓練法の2大要素
- 心を向ける対象
ある対象にひたすら心を傾ける(聞く・見つめる)、または言葉や文(または筋肉活動)を繰り返す。 - 受け身の態度
うまくいくか心配せず、雑念が浮かんだ時は受け身のまま流し、さりげなく下の対象に心を傾け、繰り返しに戻る。
自律訓練法の効果
次のようなストレスによる有害反応を軽減することができます。
- 不眠
- 不安
- 抑うつ
- イライラ
- 高血圧
- 動悸
- 息切れ
- 頭痛
- 体の痛み
- 喉のつまり
- 胃の痛み
- 下痢や便秘
自律訓練法の方法
自律訓練法では、いくつかの公式を心の中で順番に繰り返し唱えながら、自分の体に意識を向けて、体の変化をとらえていきます。
標準練習には、背景公式を始め第1公式から第6公式まであります。各公式を段階的に練習しマスターすることで、自律神経が副交感神経優位に働き、不快リラックス状態が得られます。
公式の内容については、例えば最も重要な初めての3つの公式は下記の通りです。
背景公式
「気持ちが落ち着いている」と心の中で数回唱えます。
目を閉じて力を抜いて静かにしていると、徐々に自然と気持ちが落ち着いてきます。
※積極的に気持ちを落ち着かせようと努力しないことが重要です。
第1公式〈四肢の重感練習〉
「右腕が重たい」「左腕が重たい」「両足が重たい」と心の中で数回ずつ唱えます。
腕や脚の筋肉が“だらん”と弛んだ感覚を感じ取り、味わいます。
※自然と筋肉の緩んだ感覚を得られるのを受け身になって待ちます。
第2公式〈四肢の温感練習〉
「右腕が温かい」「左腕が温かい」「両足が温かい」と心の中で数回ずつ唱えます。
腕や脚の筋肉が弛んでくることで血管も弛んでひろがり、血行が良くなります。
実際に皮膚温が上昇しますので、腕や脚の体温を感じて味わいます。
公式を唱え終わったら、必ず消去動作を行ってください。
目を開ける前の準備運動です。
消去動作
目を閉じたまま両手をグーパーグーパーと5、6回握ったり開いたりを繰り返します。
そして、両腕の曲げ伸ばしを5、6回行い、大きく伸びをして全身に力をいれ、深呼吸をしてから目を開けます。
朝、昼、晩のようにお好きなタイミングで、1日3セット行うようにしてください。
練習場所も慣れてくれば、電車の中やバスの中などでも練習してみてください。
毎日コツコツと練習を続けることによって、心の安定や体質改善など、ストレスに強い心と体がつくれるようになります。
※訓練を途中で中断する場合にも、必ず「消去動作」を行うようにしてください。
自律訓練法の準備
実際に練習を行う前に、次の準備をしてください。
①環境の準備
練習しはじめの頃は、できるだけ落ち着きやすい環境を準備します。
- 静かで邪魔の入らない場所を選びましょう。
- 室温は快適な温度に調整しておくと良いでしょう。
- 照明は少し落としておきます。目を閉じて訓練を行いますので、照明はついていて構いませんが、明るすぎてまぶた越しに光が気になる場合は、光の刺激で脳が十分に休まりにくいので調整してください。
②体の準備
- 空腹時や満腹時はなるべく避けておきます。
- 食後は1時間以上時間を置いてから訓練を行います。
- トイレも済ませておいてください。
〈服装〉
体を締め付けたり、窮屈にならないよう、
- ベルトやネクタイ、靴ひもなどをゆるめる。
- 腕時計やメガネなどを外す
〈姿勢〉
- 座位 ・椅子は背もたれが付いてても付いていなくても良い ・座った時に脚の裏全体が床に着く高さの椅子を選ぶ ・深く楽に腰掛けて余分な力を抜く ・しばらく同じ姿勢でいても楽でいられる姿勢が良い ・前に傾きすぎたり後ろに反り返るのはNG ・肩幅くらいに足を開き、腕は膝の上に置く ・指先が膝の内側に向き、肘や腕に力が入らず楽な状態にする ・腕を体の両脇に下ろしておいても良い
- 仰臥姿勢 ・仰向けになって手足を楽に伸ばす ・肘はやや“くの字”に軽く曲げ、手のひらは下に向ける ・足は軽く開き、つま先はやや外側に向ける ・ひざ下にタオルやクッションを敷いて、膝に少し角度をつけると、脚や腰の緊張を弛めやすい ・枕を使用するときは低めのものにして背筋も休める
③心の準備
- 目を軽く閉じることで、脳の興奮を下げやすくする
- 頑張ろうと意気込むことは、リラックスとは正反対の心の姿勢
なるだけ安らかな心の姿勢をとるために、自分の体にそっと注意を傾ける - 腕や足の位置を意識してみたり、肌に触れている衣服や布団、椅子の感触や足の裏が床に触れている感触など、体から伝わっている感覚をそっと眺めるように味わう
ここまでが自律訓練法の基礎となります。
ご興味のある方は、具体的な指導を含めてご相談に乗らせていただければ幸いと思います。